サリバン米大統領補佐官は23日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の履行状況を検討する際、中国企業のメキシコでの自動車生産問題を取り上げる考えを示した。
共和党の大統領候補トランプ前大統領が、メキシコ製造の中国系電気自動車への高関税を警告する中、バイデン政権も「中国製自動車」問題への対応を本格化する姿勢を示したとみられる。
サリバン補佐官はブルッキングス研究所での講演で「USMCAの更新時には、北米のサプライチェーンの範囲や原産地規則、中国などによるメキシコでの自動車サプライチェーンへの関与が議論の焦点となる。慎重な検討が必要だ」と述べた。
USMCAは北米自由貿易協定(NAFTA)に代わり2020年に発効。6年ごとの履行状況検討が定められており、初回は2026年の予定だ。現行協定では一定条件下でメキシコ製造車両に無関税措置が適用される。だが、中国の電気自動車メーカーがメキシコを足がかりに米国市場参入を図ることへの警戒が強まっている。中国最大手のBYDがメキシコに工場建設を検討しているとの報道に、米国側は既に警戒感を示している。トランプ前大統領はデトロイトでの演説で「大統領就任後、USMCAの6年ごとの再交渉条項を発動し、より有利な取引を目指す」と表明した。
サリバン補佐官は対中政策について、「デカップリング(供給網分離)」ではなく「デリスキング(リスク軽減)」の方針を改めて強調。「中国のような競争相手への高付加価値製造依存を避けるため、国内投資を進めるべきだ」と述べ、「供給網の多様化と強靭化により、中国による供給網での影響力行使を防ぐ必要がある」と指摘した。
韓国など各国の対中輸出規制への協力については「各国で見方や優先順位は異なる」としながらも、「G7では中国への対応方針は異なるものの、基本原則で一致している」との認識を示した。
バイデン政権による通商法301条に基づく中国製電気自動車への関税引き上げについて、サリバン補佐官は「中国は国内需要を大幅に上回る生産を行い、意図的な低価格での過剰供給により、世界の製造業者の経営を圧迫している」と指摘。「第二の中国ショックを防ぐための301条措置だ」と説明した。
さらに、バイデン政権の措置が戦略的で的を絞ったものだと強調し、「無差別な包括関税は米国と同盟国の労働者、消費者、企業に打撃を与える」と述べ、トランプ前大統領の「一律関税」政策を暗に批判した。