世界初の量産ハイブリッド車「プリウス」
初代モデルの実力を再評価
現代の目線でも光る性能
トヨタ・プリウスは、世界で初めて量産化されたハイブリッド車だ。現在では様々なハイブリッド車が市場に登場しているが、プリウスは依然として業界のパイオニアとして高い評価を受けており、その完成度を超えるモデルは未だ少ない。ただし、デビュー当時の市場の反応は芳しくなかった。石油価格が安価だった時代であり、ハイブリッドを選択する必要性が低かったためである。
しかし、原油価格の上昇と環境規制の強化に伴い、プリウスは徐々にベストセラーの座を確立していった。1997年の発売以来、27年の歳月をかけて5世代にわたり進化を遂げ、現行モデルは歴代プリウスの中でも最高の商品性を誇る。そんな中、初代プリウスが現代の基準で見ても驚くべき競争力を持っているとの評価が一部で上がっている。
燃費を追求した設計
室内の快適性も重視
プリウスは、ハイブリッドシステムを搭載していなくても優れた燃費性能を発揮できたはずだ。燃費効率を追求した独自のホイールサイズと形状、軽量ボディと最適な重量配分、空力性能を考慮したデザインが見事に調和しているからである。デザインはトヨタの米国デザイン拠点CALTYが手がけ、空力性能と個性を両立させた特徴的なスタイルは、今日までプリウスの象徴として受け継がれている。
初代プリウスのボディサイズは現行モデルと比べてコンパクトだ。全長4,310mm、全幅1,695mm、全高1,490mmという数字は、全長4,600mm、全幅1,780mm、全高1,420mmの現行モデルと比較すると、大きな違いがある。それにもかかわらず、室内空間は車両サイズの割に広いとされている。その理由は居住性を最優先した設計方針にあった。
コンパクトでも広い室内
設計の最優先事項は「これ」だった
トヨタが初代プリウスを開発する際、最初に重視したのはモーターやバッテリーの配置ではなく、乗員のヒップポイント(着座位置)だった。適切な高さに着座位置を設定し、それを基準に室内空間を設計。車体形状やパワートレインの配置も、この条件に合わせて決定された。そのため、初代プリウスは視界の良さと開放的な室内空間を実現できたという。
さらに、センターコンソールを必要最小限に抑え、シフトレバーをステアリングコラムに配置することで、前席から後席への移動を可能にした点も特徴的だ。トランクの容量は392Lを確保し、ゴルフバッグ4個が収納可能。車両サイズの割に広い室内空間を実現できた秘訣は、ホイールベースにもある。初代プリウスは前後のオーバーハング(車軸からバンパーまでの距離)を抑え、2,550mmのホイールベースを実現。全長に対して長いホイールベースながら、最小回転半径は4.7mに抑えられている。
パワーは控えめながら優れた燃費
後期型は1L当たり31kmを達成
ただし、走行性能は必要最低限のレベルにとどまっていた。初期型は最高出力58馬力の1.5Lガソリンエンジンに、40馬力の電気モーターが組み合わされた。2001年のマイナーチェンジでは、エンジン出力が70馬力、モーター出力が44馬力まで向上し、より余裕のある走りを実現した。
プリウスの真価である燃費性能は、初期型でも現行モデルと比較して遜色のない数字を記録している。初期型は10-15モード燃費で28.0km/Lを達成。後期型では回生ブレーキシステムの改良により、31.0km/Lまで向上した。初代プリウスの販売価格は218万円で、同クラスのガソリン車と比べると割高だった。しかし、当時最先端のハイブリッドシステムを搭載していることを考えれば、十分に納得できる価格設定だったと言える。