韓国の国家情報院の建物をドローンで撮影した中国人観光客が警察の取り調べ後に釈放された問題で、論争が広がっている。中国でスパイ容疑で約1年近く拘束中の韓国人との対応の違いに、韓国のネット上で怒りの声が相次いでいる。
12日、Newsisの報道によると、ソウル瑞草警察署は中国籍の40代男性Aを航空安全法違反の疑いで2日間取り調べた後、釈放した。
Aは9日、ソウル瑞草区内谷洞にある文化遺産の献仁陵(ホニンルン)をドローンで撮影中、国家情報院の建物の一部を撮影した疑いが持たれていた。警察はAを現行犯逮捕し、2日間の取り調べと出国禁止措置を講じたものの、不拘束のまま釈放。警察は今後、追加調査を行う方針だ。
この対応に世論の反応は厳しい。過度に寛容な措置ではないかとの批判が噴出している背景には、中国側の対応との温度差がある。
中国は昨年7月1日、反スパイ法を改正。国家安全保障強化を名目に、重要施設付近での撮影行為をスパイ行為と規定。軍事施設や国家機関周辺での撮影は犯罪とみなされ、処罰の対象となっている。
実際、昨年12月には安徽省合肥市在住の韓国人Bが自宅で逮捕され、同市国家安全局に連行される事案が発生。中国の半導体企業に長年勤務してきた専門家Bは、中国の半導体情報を韓国側に流出させた疑いで、逮捕後5カ月間にわたりホテルで取り調べを受けた。その後、改正反スパイ法が適用され、韓国人として初のスパイ容疑者となった。中国検察は5月にBを拘束し、現在も身柄を拘束中だ。同法では、スパイ容疑が適用されれば通常3〜10年の懲役刑が科され、重大事案では無期懲役や死刑も想定される。
中国と韓国の対応の差に不満が高まるなか、ネット上では韓国の捜査機関により厳格な対応を求める声が目立つ。「文化遺産の撮影が目的だったとしても問題ない。中国が韓国人に一方的に厳しい法を適用して苦しめているのだから、我々も同様の対応をすべきだ」、「外交的な柔軟さより、自国民保護を優先すべきだ」といった意見が相次いでいる。