日本銀行の植田和男総裁が、利上げが物価安定目標の実現に役立つと述べた。12月に予定されている今年最後の金融政策決定会合を控え、利上げへの意欲を改めて強調したことで、12月の利上げ可能性が高まったとの見方が広がっている。
共同通信と日本経済新聞によると、植田総裁は18日、名古屋で開催された経済団体との懇談会で「段階的な利上げが、長期的な経済成長を支え、物価安定目標を持続的かつ安定的に実現していくうえで有効だ」と述べた。
また、追加利上げについては「経済、物価、金融情勢次第だ」とし、「各金融政策決定会合ごとに経済や物価の見通しを更新しながら政策判断を行っていく」と語った。
実質金利水準に関しては、「2010年代と比べてもマイナス幅が拡大し、金融緩和の度合いがむしろ強まっている」との認識を示した。
これに先立ち、日銀は今年3月に短期政策金利を17年ぶりに引き上げ、マイナス金利政策を終了した。そして7月の会合で金利を0—0.1%から0.25%程度に引き上げたが、9月と10月の会合では据え置かれた。
市場では12月の追加利上げ観測が有力視されている。来年1月に就任するドナルド・トランプ次期アメリカ大統領の追加関税や減税などインフレ圧力を高める政策の影響で、日本でも12月の追加利上げに重きが置かれている。トランプの政策は全般的に円安を引き起こす傾向があり、日本国内のインフレ圧力を高めているためだ。
アメリカ大統領選前まで1ドル=152円前後だった為替レートは、トランプ当選後に156円まで急上昇し、現在は154円程度でやや落ち着いている。
三村淳財務官は7日、「政府としては投機的な動きを含め、為替市場を強い警戒感を持って注視している」と述べ、「我々が注目しているのは政権ではなく市場だ。アメリカ政権が交代しても為替が過度に変動すれば、これまで同様に対応する」と語った。
第一生命研究所の藤代宏一チーフエコノミストは、「ドル高・円安が進行し、12月の利上げ可能性が高まった」とし、「個人消費も上方修正され、賃金も来年春の労使交渉で順調に上がる見通しだ。利上げ可能な環境が整いつつある」と分析した。