19日の金価格は再び上昇した。ドナルド・トランプ次期アメリカ大統領が大統領選で勝利した後、ドル高の影響で下落傾向にあった金は、ロシアの核攻撃の脅威により反発した。一方、国際原油価格はウクライナ戦争の激化に対する懸念が高まっているにもかかわらず、停電で稼働が一時中断されていたノルウェー北海油田が再稼働したことにより、大きな変動は見られなかった。
金価格、核リスクで急反発
Yahooファイナンスによると、金の先物価格はこの日、1週間ぶりの高値となった。12月渡しは、前日比19.89ドル(0.76%・約3,077円)高の1オンス当たり2,634.50ドル(約407,570円)を記録した。ウクライナはこの日、戦争開始から1000日目を迎え、アメリカから供給した長距離ミサイルATACMS(エイタクムス)でロシア本土を攻撃したことにより、ロシアが核兵器の使用を示唆するなど、地政学的リスクが一段と高まった。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、核兵器使用基準を引き下げる核ドクトリン改正案に署名した。これはウクライナへの核兵器使用の可能性を示唆し、ロシア本土攻撃を容認したアメリカへの牽制でもある。金価格はトランプ前大統領の当選以降、関税や不法移民の追放といった政策がインフレーション(物価上昇)を引き起こす懸念からドル高となり、需要減少で下落していた。しかし現在、地政学的リスクの高まりにより、安全資産である金への需要が再び増加している。外国為替仲介業者ペッパーストーンのリサーチ戦略家アフマド・アシリは19日の分析ノートで「地政学的リスクが再浮上した」とし、「これにより金の需要が高まり、信頼できるヘッジ手段としての役割が強化されている」と指摘した。今年に入って金の価格は27%上昇しており、ニューヨーク株式市場の主要指標であるS&P500指数の上昇率23%を上回っている。
ゴールドマン「3,000ドル」目標を堅持、中銀の買い需要に期待
金価格が引き続き上昇するとの見通しが強まっている。ドル高により金価格が一時的に下落したが、トランプ2期政権によるインフレが加速し、世界が再び広範囲なインフレに直面するため、価値保存手段としての金の需要が高まると予想されている。ゴールドマン・サックスはこうした動きの中で、各国中央銀行が金の保有を増やすと予想し、顧客に金の購入を勧めている。ゴールドマンは、アメリカ大統領選で早期に勝者が確定したことで、金市場の投機的な需要が消失したとし、現在の金価格は魅力的な参入ポイントにあると評価した。同社は来年末までに金価格の目標を1オンス当たり3,000ドル(約464,115円)と再確認した。
原油、北海油田再開で一服
国際原油価格は前日とほぼ変わらなかった。原油価格を圧迫していた一時的要因が解消されたことによる。しかし、ウクライナ戦争が激化する中、ロシアの石油供給に支障が生じる懸念は残っており、上昇圧力は強い。国際原油指標のブレント原油は翌年1月渡しが午後の取引で、前日比0.05ドル(0.1%・約8円)安の1バレル当たり73.25ドル(約11,332円)となった。アメリカ原油指標のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は逆に0.05ドル(0.1%・約8円)高の1バレル当たり69.21ドル(約10,707円)を記録した。ロシアの核攻撃の脅威にもかかわらず、この日の原油価格が大きく動かなかった理由は、北海油田の再稼働によるものだ。前日に停電で稼働が一時中断されていたノルウェー北海の「ヨハン・スヴェルドルプ」油田が再稼働を開始したとの報告が、原油価格を安定させた。