体全体が黒い毛で覆われたペンギン
背中が黒い毛、腹が白い毛という特徴を持つペンギンは、その姿が白いシャツにタキシードを着たように見えることから「南極の紳士」という愛称で知られている。しかし、南極付近の島で全身が真っ黒な毛で覆われた珍しいペンギンが発見され、注目を集めている。
英国のメディア「インディペンデント」によると、ベルギー出身の野生動物写真家イヴ・アダムス氏が、今月初めに南極海の英国領サウスジョージア島を訪れた際、非常に珍しいペンギンを発見したという。
アダムス氏は「南極探検を始めた今冬、全身が黒いキングペンギンを発見した」と述べ、1枚の写真を公開した。その写真には、くちばしを除いた体全体が濃い黒色で覆われたペンギンの姿が写っていた。
メラニンが過剰に生成され、毛が黒く変化する遺伝子の異常
全身が黒い毛で覆われており、まるで黒い絵の具で塗られたかのような見た目をしている。キングペンギンは、皇帝ペンギンに次ぐ大きさを持つペンギンの一種で、主に南極周辺に生息している。
アダムス氏は、「最初にブラックペンギンを発見したのは今回の探検の同行していた仲間の一人で、その後、私が現場に駆けつけて撮影した」と説明した。また、「数十万羽のペンギンが集まる群れの中で、ブラックペンギンはたった一羽しかいなかった」と語った。
この黒いペンギンは、遺伝子変異による黒色症、いわゆるメラニズムを持っていると推測されている。メラニズムとは、動物の体内に存在する色素であるメラニンが過剰に発現し、皮膚や体組織、毛などが黒く変化する現象を指す。この現象は、メラニン色素が欠乏して全身が白くなるアルビニズム(白色症)の正反対にあたるものだ。
メラニズムを持つ動物は珍しいものの、自然界で発見されることがある。代表的な例として知られるのが、ブラックパンサーと呼ばれる黒ヒョウだ。ただし、鳥類や哺乳類でメラニズムが確認されるケースは非常に稀である。
アダムス氏は、「ブラックペンギンのような例は非常に珍しく、これに関する研究はほとんど進んでいない」とし、「ブラックペンギンは、その体の色から氷上や水中で捕食者に見つかりやすい可能性がある」と指摘した。
氷河に囲まれた南極の海で、シャチやアザラシなどの捕食者から身を守るため、ペンギンの腹部にある白い毛は重要な役割を果たしている。しかし、メラニズムのペンギンは全身が黒いため、氷河と対照的になり、捕食者に見つかりやすくなるとされている。
最後にアダムス氏は「遠くから見ると非常に濃い黒色に見えるが、近くで観察すると、首と腹の羽毛に濃い緑色が混じっているのが分かった」と語った。また、「ペンギンの群れはブラックペンギンを完全に仲間として受け入れているようだった」と伝えた。