3日夜、尹錫悦（ユン・ソンニョル）大統領が非常戒厳を宣布し、国内の政局は一気に極度の緊張状態に陥った。戒厳令に基づく軍の投入と主要政治家の逮捕未遂により、3時間も経たずに戒厳令は事実上無効化された。軍事作戦の失敗要因は多面的な要素から生じたと分析されている。
非常戒厳令の発令は衝撃的だった。戒厳とは、戦時や事変などの非常事態において、行政権と司法権を戒厳司令官（現役将官の中で大統領が任命）が行使する制度だ。
憲法第77条第1項は「大統領は戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態において、兵力で軍事上の必要に応じるか、公共の安寧秩序を維持する必要がある場合、法律の定めるところにより戒厳を宣言できる」と規定している。一番最後の非常戒厳は、光州事件を引き起こした1980年5月17日のものだった。
尹大統領は「北朝鮮共産勢力の脅威および自由民主主義体制の擁護」を名目に戒厳令を宣布した。戒厳司令部は直ちに国会の活動を禁止し、主要政治家の逮捕や報道統制など厳しい布告を発表した。
野党「共に民主党」は、政府が首都防衛司令部（首防司）特殊任務部隊と空挺部隊を動員し、「共に民主党」の李在明（イ・ジェミョン）代表、禹元植（ウ・ウォンシク）国会議長、与党「国民の力」の韓東勲（ハン・ドンフン）代表を含む要人の拘束を企図したと主張している。
窓ガラスまで割って国会議事堂に侵入した武装軍人が物理的な力を行使しようとする、想像を絶する事態が発生した。これに対し民主党側は「軍の行動は内乱の企て」と厳しく非難した。
戒厳令発令後、国会は迅速に戒厳解除要求決議案を提出した。在籍議員190名全員が賛成票を投じ、決議案は満場一致で可決された。これにより戒厳は無力化された。
軍と大統領府は国会の超高速決議過程を見過ごした可能性がある。戒厳の正当性を示すために計画していた一連の作戦が、国会決議により正当性を失った。
軍内部で作戦命令をめぐる混乱が生じたとの情報がある。国防省が大統領府から戒厳令を受け取る過程で、十分な事前協議と準備がなかったとされる。一部の軍指揮官が作戦の正当性に疑問を呈したという話もある。
民主党側は、李在明代表の拘束未遂が民主党補佐官らとの物理的衝突により失敗したと主張している。
戒厳司令部と現場指揮部間の命令伝達が円滑でなかった点も作戦失敗の一因となった。
戒厳令発令直後、市民やメディア、経済界から強い反発が起こった。主要メディアは戒厳令を「憲政の蹂躙」と位置づけ、軍事的圧力を公然と批判した。暗号資産市場など金融市場の即時的な混乱も政治的正当性を弱める要因となった。
民主党側はこれを機に「違法・違憲の戒厳令」という強硬な姿勢を示し、国会を中心に世論を結集することに成功した。世論の圧力が戒厳軍内部に心理的負担を与えた可能性が高い。
主要国の反応も好意的ではなかった。米国や欧州を含む国際社会が戒厳令に即座に懸念を表した。米国務省は「民主的原則に対する重大な違反」と警告した。グローバル金融市場でも韓国経済の不確実性への懸念が急増した。こうした国際的批判が軍内部や政府の行動を萎縮させる要因となった可能性が高い。
3時間で戒厳令が事実上無効化され、尹大統領は致命的な政治的打撃を受けた。民主党側は即座に尹大統領の弾劾カードを切る可能性が高い。実際、尹大統領の内乱罪成立の可能性まで提起されている。全斗煥（チョン・ドゥファン）・盧泰愚（ノ・テウ）前大統領の内乱罪の事例と類似の文脈で評価される可能性がある。国会と法曹界が大統領の弾劾訴追および司法的責任を議論する可能性が高い。それだけ尹政権は取り返しのつかない政治的危機に直面している。
