野村証券は、韓国の政治的不透明感が依然として続く中、来年5月までにドルウォン相場が1ドル=1,500ウォン(約159円)に到達する可能性があるとの見解を示した。
9日、金融業界の関係者によれば、野村証券は最新の報告書で「来年第2・第4四半期にウォンの相場はさらなる下落を示すだろう」とし、「来年5月末を目標にドル買いのポジションを推奨する」と述べた。
野村証券はウォン安の要因について、△ドナルド・トランプ新政権の発足に伴う外部環境の変化 △韓国銀行による外貨準備の対応能力不足 △1,400ウォン(約148円)台の為替水準に対する政策当局のスタンス変化 △国民年金のヘッジ需要減少 △資産流出リスクとポートフォリオ流入の弱まり △韓国のマクロ経済基盤の弱体化△政治的不確実性の増加などを挙げている。
野村証券は、来年発足するトランプ次期政権が市場に関税政策や景気刺激策への期待を高め、ドル高が進む可能性を示唆した。この影響で、対中国依存度が高い韓国のウォンは大幅な下落圧力を受ける可能性があると分析している。
また、来年第2・第4四半期にはドル/人民元相場が7.60人民元(約158円)に達すると予想され、これが韓国ウォンにさらなる下落要因をもたらすと指摘している。この日の午前10時6分時点で、ドル/人民元は7.2807で取引されており、前日比0.0107(0.15%)上昇している。
また、韓国銀行の外貨準備対応力の不足もウォン安を後押しする要因として挙げられている。
野村証券は、「韓国銀行の外貨準備適正比率はIMF基準で平均93%と低水準にあり、固定為替モデル基準では73%まで下がっている」と指摘している。今年上半期だけで94億ドル(約1兆4,255億円)が純売却されており、ウォン安を抑制する余力が限られていると分析した。
さらに、ドル高環境下でドル売りヘッジによる損失懸念が高まり、ヘッジ需要が減少している点や、個人の海外投資の増加、外国人の債券投資の遅れなどにより株式市場に負担を与えている状況も指摘された。
野村証券は、「韓国の弱体化したマクロ経済ファンダメンタルズも課題だ」と述べており、半導体やAI投資への恩恵は一部期待されるものの、従来型チップの需要低下が韓国全体の輸出経済に重荷となっていると分析した。同証券は来年の韓国GDP成長率を前年比1.7%と予測しており、上半期にはさらに大きな減速が予想されるとしている。