サイクロン「チド」がモザンビークとマダガスカルの間にあるフランス領マヨット島を直撃し、数百人から数千人の死者が出たと推定されている。
フランス通信社「AFP」によると、15日(現地時間)フランソワ=グザビエ・ビユーヴィル県知事はインタビューで「死者数が数百人に上るのは確実だとし、1000人から数千人に達する恐れもある」と述べた。
県知事は、住民の大半がイスラム教徒で伝統的に24時間以内に遺体を埋葬することから、「最終的な死者数の把握は極めて困難になる」と付け加えた。また、マヨット島の都市である「マムズ」の市長も、病院で9人が危篤状態にあり、246人が重傷を負ったと報告した。さらに「病院や学校が被害を受け、家屋が完全に破壊された」とし、サイクロンが「何も残さなかった」と現地の惨状を伝えた。フランスのブリュノ・ルタイヨー内相も14日、スラム街の仮設住宅が破壊されたと述べた。
マヨットには約10万人の不法移民がいると推定されており、正確な被害規模の把握はさらに難しくなると予想される。元看護師のウセニ・バラハチは、一部の不法移民者が「マヨットから追放させるための罠かもしれないという恐れ」から、外に出て助けを求めることができなかった可能性もあると指摘した。
これに先立ち、マヨットの32万人の住民は14日、最大風速226km/hの突風を伴う「チド」の接近に伴い、避難指示を受けた。チドにより電柱が倒れ、木が根こそぎになり、人口の3分の1以上が住むスラム街が甚大な被害を受けた。現地住民のイブラヒムは、本島を横断する道路が途切れていたが自ら突破したと語り、その光景を「世界の終わり」のようだった語った。
国連人道問題調整事務所(OCHA)は、このサイクロンにより約170万人が危険にさらされていると分析した。また16日までに隣国マラウイにも大雨が降り、鉄砲水が発生する恐れがあると警告しながら、ジンバブエとザンビアでも豪雨が予想されると付け加えた。
被害の拡大を受け、フランス当局と国際社会はマヨットへの支援を急いでいる。ルタイヨー内相は、既に島に配備されている110人の兵士と消防士を支援するため、160人の要員とともに16日にマヨットを訪問する予定だと明らかにした。
マダガスカル東部のフランス領レユニオン島からも、3トンの医療品と輸血用の血液、17人の医療スタッフを乗せた航空機がマヨットに到着し、さらに2機の軍用機が派遣されると発表した。
海軍の巡視船もレユニオンを出発し、電力会社EDFの社員を含む人員と機材をマヨットに輸送する予定だ。ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州連合(EU)委員長も「フランスに心からの哀悼の意を表する」とし、「今後数日間、支援する準備ができている」と述べた。
15日、フランス領コルシカ島を訪問中のフランシスコ教皇もマヨットの住民のために祈ることを呼びかけた。フランス大統領のエマニュエル・マクロンはマヨットの住民を支援すると約束した。国連児童基金(ユニセフ)も被災地の住民を支援するため、要員をモザンビークに派遣した。ユニセフは「多くの家庭、学校、医療施設が部分的または完全に破壊された」とし、「不可欠な基本サービスの継続性を確保するために、政府と緊密に協力している」との声明を発表した。
マヨットを通過した「チド」は15日朝、モザンビーク北東部の沿岸都市ペンバから南40kmの地点に上陸した。専門家らは、「チド」を気候変動による世界の自然災害の最新事例と分析している。フランス気象局の気象学者フランソワ・ギュランは、今回のサイクロンは温暖化したインド洋によってより強力になったと指摘した。