第1期政権時に中国に続いて欧州連合(EU)との貿易戦争を展開したドナルド・トランプ次期大統領が、就任1か月前にEUへの報復関税を予告した。これは第2期政権でも中国およびEUとの同時多発的な貿易戦争を再開する可能性を示唆するものとみられる。
トランプ次期大統領は20日(現地時間)、自らが立ち上げたSNSの「Truth Social(トゥルース・ソーシャル)」に投稿し、EUを非難。「EUに対し、対米貿易で生じる巨額の赤字を埋めるため、米国の石油と天然ガスを大量に購入するよう求めた」と主張。「そうしなければ、最後まで関税を課し続ける」と強調した。
2018年の第1期政権時に中国への報復関税で貿易戦争を開始したトランプ次期大統領は、翌年にはEUに対しても航空機メーカーへの補助金問題で制裁関税を課し、戦線を拡大。EUはジョー・バイデン大統領就任後の2021年になってようやく米国との関税猶予という形で休戦に入った。トランプ次期大統領は、今年の選挙戦でEUを含むすべての国からの輸入品に10~20%の一律関税を課す意向を示し、貿易戦争再開を示唆。欧州企業への批判も続けている。9月の選挙集会では「ドイツの自動車メーカーに米国企業になってほしい。米国に工場を建設してほしい」と述べた。
アメリカ合衆国通商代表部(USTR)は、2022年の米国とEUとの貿易額は、輸出が5,920億ドル(約92兆7,000億円)、輸入が7,233億ドル(約113兆2,800億円)だった。結果として、米国は1年間でEUとの貿易で1,313億ドル(約20兆5,600億円)の赤字を計上した。
英紙「フィナンシャル・タイムズ」は7月、EUがトランプ第2期政権に備えて2段階の対応戦略を練っていると伝えた。EUはトランプ第2期政権発足後、迅速に貿易交渉を開始するが、交渉が失敗した場合は特定の米国製品を狙い撃ちする報復措置を取るとされる。
一方、トランプ次期大統領はこの日のTruth Socialに、共和党の造反票で頓挫した新予算案にも言及。自身の核心的要求だった連邦政府の負債上限撤廃問題について「議会は愚かな負債上限を完全に撤廃するか、2029年まで延長すべきだ。もす、そうしないなら、我々は一切妥協しない」と強調した。