読売新聞は、韓国の全国民主労働組合総連盟(民主労総)の幹部らが北朝鮮の指令を受け、処理水放出に関連して反日世論を煽るよう指示されたと報じた。
読売新聞は9日、「スパイ団事件」に関与した民主労総の幹部が、福島第一原発の処理水放出に関して反日世論を煽るよう北朝鮮から大量の指示を受けていたとする記事を1面トップで掲載した。
同紙は昨年11月8日の韓国水原(スウォン)地方裁判の所決を引用し、「北朝鮮が反日感情を利用して韓国内の分断と日韓対立を助長した実態が明らかになった」と伝えた。
水原地裁は、民主労総の元組織争議局長Aに対し、国家保安法違反(スパイ行為、不法入出国、会合・通信、便宜提供等)で一審判決として懲役15年を言い渡した。
Aは2018年10月から2022年12月までの間、計102回にわたり北朝鮮からの指令を受け、スパイ活動を行った疑いがある。2017年9月から2019年8月には中国やカンボジアなどを訪れ、北朝鮮工作員と直接接触していたという。
読売新聞は、Aが2018年10月のスパイ活動開始から2023年1月の捜査本格化直前まで、北朝鮮と継続的に連絡を取り合っていたとし、韓国で「摘発されたスパイ事件としては最大規模」と指摘した。
さらに、裁判で証拠採用された指令文のうち、「反日・反保守・反米」活動に関する指令が計34件で全体の38%を占めていたと報じた。
特に2021年5月には、福島原発の処理水放出に関連して「反日世論を煽り、日韓対立を取り返しのつかない状況に追い込め。核テロ行為と断罪する情報を集中的に拡散せよ」という具体的な指示があったという。
この指令は日本政府が処理水放出を決定してから約20日後に出されたとされ、当時の日韓関係は徴用工問題に関する裁判などで冷え込んでいた。
北朝鮮はAに対し、「日韓対立を激化させる戦術を立て、積極的に実践することが効果的」、「在大韓民国日本国大使館周辺での抗議集会、日本製品の焼却など闘争を大胆に展開せよ」といった指令も出していた。
読売新聞は「実際に韓国ではこの時期から市民団体の抗議活動が活発化した」とし、2021年7月の東京オリンピックの開会式を前に市民団体などが処理水放出に反対する集会を連日開催していたと伝えた。