スペイン出身のトランスジェンダー女優がゴールデングローブ賞の授賞式で行なった受賞スピーチで注目を集めている。
今月6日(現地時間)、海外メディア「NBCニュース」や「USAトゥデイ」などによると、映画『エミリア・ペレス』に出演したトランスジェンダー女優、カルラ・ソフィア・ガスコン(52)は、1月5日にロサンゼルスのビバリーヒルトンホテルで開催された第82回ゴールデングローブ賞の授賞式で、ミュージカル・コメディ部門の作品賞を受賞した際にスピーチを行った。
フランス出身の映画監督ジャック・オーディアール監督の映画『エミリア・ペレス』は、メキシコのギャング団のボス、マニタスが弁護士の助けを借りて性別適合手術を受け、エミリア・ペレスとして生きていく物語だ。ガスコンは主演のギャング団ボス役を演じた。作品賞受賞のため壇上に上がった彼女は、監督の指名を受け代表としてスピーチを行った。
仏教の僧侶の衣を思わせるオレンジ色のドレスを着たガスコンは、マイクを手に取ると「ありがとうございます」と述べた後、「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経」と3回唱えた。「南無妙法蓮華経」とは、新興宗教団体である創価学会の会員が唱える題目の一つで、仏教の法華経の正式名称である「妙法蓮華経」の日本語読みから由来する。「南無」は「帰依します」という意味の仏教用語で、「南無阿弥陀仏」の「南無」と同じだ。信者たちは「法華経に帰依します」という意味であるこの言葉を唱えることで、誰もが福を受けられると信じている。キリスト教の「アーメン」に相当する言葉だ。
ガスコンは「今日は仏教を象徴する色の衣装を着てきました。皆さんに伝えたいメッセージがあるからです」と述べ、「光は常に闇に打ち勝つものです」と話をつづけた。すると、会場から拍手と歓声が上がった。さらに「皆さんは私たちを刑務所に入れることも、殴ることもできるかもしれません。しかし、私たちの魂、存在、アイデンティティを奪うことは決してできません」と語り、「自由のために声を上げてください。私は皆さんが望む形の人間ではなく、ありのままの自分なのです」と訴えた。
ガスコンは2018年まで、フアン・カルロス・ガスコンという男性の名前で活動していた。2016年に自身の性自認が女性であることを公表し、2018年に性別適合手術を受けた後、現在の名前で活動を続けている。ガスコンは昨年11月、USAトゥデイとのインタビューでカミングアウトへの不安があったことを明かしている。「人生の岐路に立たされていました。大好きな俳優の仕事を諦めなければならないかもしれないという恐れがありました」と語った。
映画『エミリア・ペレス』は今回の授賞式で作品賞のほか、助演女優賞(ゾーイ・サルダナ)、非英語作品賞、主題歌賞の計4部門を受賞し、映画部門で最多受賞作品となった。ガスコンは主演女優賞にノミネートされ、有力候補として注目されていたが、映画『サブスタンス』のデミ・ムーアが受賞した。