任期中、人工知能(AI)半導体を戦略的資源と位置付け、中国など事実上の敵対国への販売を禁じてきたジョー・バイデン米大統領が、任期終了約10日前に新たな輸出管理政策を発表するとの見方が浮上した。バイデン大統領は中国を含む海外全諸国を3段階に分類し、友好度に応じてAI半導体の販売量を調整する方針とみられる。
Yahoo!ファイナンスを始め米メディアは8日(現地時間)、関係者の話として、バイデン政権が全世界的な規模のAI半導体輸出管理計画を準備中で、早ければ10日にも発表する可能性があると報じた。関係者によると、バイデン政権は全世界的なAI開発が米国の友好国で進められ、各国企業が米国の基準に従うことを望んでいるという。これを受け、バイデン政権は世界各国のデータセンターでAI開発・運用に使用される米国製AI半導体の販売に制限をかける計画だ。
国際市場で流通する先端AI半導体は主に米国企業の設計をもとに台湾などで生産されている。バイデン政権が考える「米国製」の基準はまだ明らかになっていない。日本のみずほ証券は昨年6月、米半導体企業エヌビディアの業績発表に関連して、同社がAI半導体市場の70~95%を占めると分析した。
関係者は、バイデン政権は世界各国を米国との友好度に応じて3段階に分類する計画だと伝えた。米国と最も親密な第1グループには日本、韓国、台湾などアジアの同盟国と英国、フランス、ドイツ、カナダなど西側諸国が含まれる。第1グループの国々は基本的に現状通り、特に制限なく米国のAI半導体を購入できる。
一方、中国、ロシア、北朝鮮、イラン、ベネズエラ、キューバ、ベラルーシ、イラク、シリアなど米国と関係が良くない国々は第3グループに分類される。これらの国々は実質的に米国のAI半導体を輸入できない。残りの国々は第2グループに分類される。
第2グループに属する国々は、それぞれに割り当てられた演算能力の合計量に応じて米国製半導体を購入できる。関係者は、第2グループの国が米国の要求する安全保障条件や人権基準に同意すれば、設定された上限をはるかに上回る量の半導体を購入できる可能性があると予測した。
新たな規制は「検証済みエンドユーザー(VEU)」方式に基づいて運用される予定だ。VEUは政府が事前に承認した企業にのみ特定品目の輸出を許可する一種の包括的許可制度である。バイデン政権は2023年、米国製半導体製造装置の対中輸出を規制しつつあり、サムスン電子とSKハイニックスの中国現地工場に例外を認める際にVEU規定を適用した。関係者は、バイデン政権がこうした輸出管理を通じて、安全な環境でAIを開発・使用する信頼できる国家・企業群を形成する計画だと述べた。
バイデン政権はこれまでAI半導体に関して3度にわたり中国を標的とした措置を講じてきた。2022年10月には米国企業による先端AI半導体の対中販売を禁止した。
これを受けエヌビディアなど米企業は性能を抑えた中国輸出向けAI半導体を別途製造して輸出したが、それも2023年10月に禁止された。先月には約140の中国企業を輸出規制対象に指定し、米国企業がAI半導体部品の広帯域メモリー(HBM)や先端半導体製造装置などを当該企業に販売することを禁じた。
中国に続き輸出の道がさらに狭まる半導体企業は、バイデン政権の計画に懐疑的だ。エヌビディアは今回の報道に関する声明で、「世界の大半への輸出を制限する最終規則は、(AI半導体の)悪用リスクを減らすどころか、経済成長と米国のリーダーシップを脅かす重大な政策転換となるだろう」と反発した。
米大手IT企業の政治ロビー活動団体である情報技術産業協議会(ITI)のジェイソン・オックスマン会長は7日、米国のジーナ・レモンド商務長官に書簡を送り、バイデン政権の新たなAI半導体規制に反対の意を表明した。オックスマン氏は、規制が追加されれば外国企業が米国企業の売上を奪うことになると指摘。さらに「米国が世界のAIエコシステムにおける有利な立場を失えば、将来それを取り戻すのは困難だろう」と警告した。