量子コンピューティング技術が、米国ラスベガスで閉幕した世界最大の家電・IT展示会「CES 2025」で論争を巻き起こした。この論争は、エヌビディアの最高経営責任者(CEO)ジェンスン・フアン氏の発言をきっかけに始まった。
フアン氏は、量子コンピュータについて「非常に有用なものでも、開発には少なくとも15年はかかる」と述べ、「最長で30年程度かかる可能性があり、実用化には少なくとも20年が必要だ」との見解を示した。この発言は業界に大きな波紋を呼び、技術の実現時期について疑問の声が上がった。
その後、米メディアは「フアン氏が量子コンピューティング企業に和解の手を差し伸べた」と報じた。きっかけとなったのは、エヌビディアが自社の年次イベント「GTC 2025」をウェブサイトで公開したことだ。
エヌビディアは、ウェブサイト上で3月20日に開催される「GTC 2025」の初日を「量子コンピューティングの日」と定めたと発表した。この発表では、量子コンピューティングに関する情報のみが公開され、その他の詳細については明かされなかった。
量子コンピューティング企業との和解を申し入れたフアン氏
フアン氏は、「GTC 2025量子コンピューティングの未来を照らす量子の日」において、関連業界のリーダーたちを招き、量子コンピューティングの行方について議論する予定だ。招待対象には、D‐ウェーブ、IonQ、リゲッティ・コンピューティングなど、量子コンピューティングの主要企業が含まれている。
これらの企業は、CESでのフアン氏の発言直後に株価が急落した。リゲッティ・コンピューティングは44.41%下落し、一日で株価が半減した。IonQとDウェーブ・クオンタムもそれぞれ39%、36.13%急落した。この動きは、フアン氏の発言が業界全体に与えた影響を如実に示している。
また、「GTC 2025」では、量子コンピューティングに関する開発者セッションや実務研修なども行われる予定だ。エヌビディアは、量子コンピューティングについて「コンピュータ科学分野で最も興味深い分野の一つであり、現在可能とされるレベルを超える高速コンピューティングの進展を約束している」と強調した。「創薬や材料開発から財務予測に至るまで、様々な分野で大きな飛躍をもたらす」として、その可能性を高く評価している。
MSが「量子技術準備の年」を宣言、量子コンピューティングに歩み寄る
米投資専門メディア「Benzinga」によれば、フアン氏は実用的な量子コンピュータの実現には20年を要すると発表した。しかし、同社はすでに量子コンピュータの能力を強化するための投資を増加させている。
同社は、量子コンピュータと従来型コンピュータシステムの統合に取り組んでおり、今後、関連技術の発表が行われる可能性が示唆されている。
また、特筆すべきは、エヌビディアが「GTC 2025」の日程を発表した同日、マイクロソフト(MS)が企業に対し量子コンピューティング時代に備えるべきだと表明したことだ。
MSの戦略的ミッションおよびテクノロジー部門責任者であるミトラ·アジラード氏は、この日自身のブログにおいて2025年を「量子技術準備の年(Quantum-Ready Year)」と宣言した。その後、米国株式市場は量子コンピューティング技術への期待と投資を反映し、急騰した。