米国の大企業がテスラのイーロン・マスクCEOとの提携を通じて、関係強化を図る動きが見られている。ドナルド・トランプ米大統領が選挙で勝利してから、マスクCEOが政権内で実力者として台頭し、これに関連する政治的・経済的利益を狙う企業からの接近が相次いでいる。
3日(現地時刻)、海外メディアのフィナンシャル・タイムズ(FT)は、最近マスクCEO傘下の企業との協力を発表する米国内の大企業が増加していると報じた。国際決済企業の「Visa(ビザ)」は、マスクCEOのソーシャルメディアプラットフォームX(旧Twitter)と提携し、年内にデジタル決済機能を含む金融サービスを開始すると発表した。XはマスクCEOの買収後、様々な論争を呼んだが、大企業の関心は衰えていない。
かつてヘイトスピーチやフェイクニュース拡散問題でXを敬遠していた電子商取引大手「Amazon(アマゾン)」は、今年1月にXへの広告費支出を前月比10倍に増やした。市場調査会社「Sensor Tower(センサータワー)」によると、これはマスクCEO傘下企業との関係改善を図る動きと解釈される。
航空業界でもマスクCEOの影響力が拡大している。ユナイテッド航空は、マスクCEOが率いる宇宙企業スペースXと協力し、今春から機内でスターリンク衛星インターネットサービスを提供することを決定した。
「Apple」も通信会社「T-Mobile」を通じてスターリンクを利用できるようiPhoneのOSをアップデートするなど、マスクCEOの技術を積極的に採用している。
さらに、スペースXのライバルである「ボーイング」さえも、大統領専用機エアフォースワンの製造遅延問題を解決するため、マスクCEOとの協議を開始したと明らかにした。
このほか、「オラクル」や「インテル」などのIT企業も、それぞれスターリンクやXとの協力を発表し、マスクCEOのネットワークに参画しようとする姿勢を見せている。
金融界でもマスクCEOとの関係改善の動きが見られる。「JPモルガン・チェース」は、マスクCEOの電気自動車企業「テスラ」に関連する1億6,200万ドル(約251億円)規模の訴訟を昨年の11月に取り下げた。同社はこの決定が政治的背景とは無関係だと主張したが、トランプ大統領の選挙勝利とマスクCEOの政権実力者としての台頭が同時期だったことから注目を集めた。
マスクCEOはトランプ政権発足後、ホワイトハウスの諮問機関である政府効率化省(DOGE)の責任者として、連邦政府の人員削減とコスト削減を主導している。マスクCEOのこうした動きは、彼の企業との関係構築が単なる経済的な利益を超え、政治的恩恵につながる可能性があるという期待を企業に抱かせている。
米アリゾナ州立大学のジョナサン・バンディ教授は、「新政権におけるマスクCEOの立場を考えると、企業がマスクCEOとの関係強化を図るのは、政治的な見返りを期待してのことと見なせる」と指摘した。