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オープンAIをはじめとする米国のAI関連企業の関係者らは、昨年から「コスパ」AIで世界的な注目を集めている中国の「ディープシーク」を巡り、米中間で本格的なAI競争が始まったと評価した。ただし、関係者らは現時点で中国のAIが米国の競合を脅かすレベルには達していないと指摘した。
米オープンAIのクリス・ルヘイングローバル部門副社長は17日(現地時間)、米経済メディアCNBCを通じて、ディープシークの低コスト・高性能AIが「米国主導の民主主義AIと中国共産党主導の権威主義AIが極めて現実的に競争していることを示した」と述べた。
ルヘイン氏はAIを「世界でこのレベルまで構築できる国は2か国のみ」と強調した。さらに「ディープシークは我々に非常に現実的な利害関係がかかった極めて現実的な競争があることを再認識させた」と語った。
中国のスタートアップ企業のディープシークは、昨年12月に大規模言語モデル(LLM)「ディープシークV3」を公開し、先月にはV3を基に推論に特化した「ディープシークR1」を発表した。
LLMは人間の言語処理のために設計された生成AIの一種であり、大規模なテキストの認識、翻訳、予測、生成が可能だ。オープンAIが開発した「GPT」もLLMの一種だ。
ディープシークは昨年、V3に情報を学習させるため557万6,000ドル(約8億円)を費やしたと主張している。これは米メタが自社のLLM「Llama 3.1」に投入した学習費用の100分の1以下の金額で、世界のAI業界に衝撃を与えた。
今回のインタビューは、10~11日にパリで開催された第3回AI行動サミットの期間中に行われた。ルヘイン氏をはじめとするAI業界の有力者らはサミット関連のイベントのためにパリに滞在していた。
米ソーシャルメディアLinkedInの共同創業者であり、現地のベンチャーキャピタルGraylock Partnersに所属するリード・ホフマン氏はCNBCを通じて、ディープシークのAIが「(米中間の)AI競争の幕開けを示す重要な出来事だ」と指摘した。ホフマン氏は「米中のAI競争が激化している」とし、ディープシークのR1が「信頼できる実用的なモデルだ」と説明した。
カナダの戦略コンサルティング会社Geopolitical Businessのアビシュール・プラカシュ(Abishur Prakash)創業者は、中国に対する米国の理解が限定的だと指摘した。彼は米国がもはや世界の技術をリードしていると確信できないとし、「米中間の差は一夜にして縮まった」と説明した。同時に「この変化は一夜にして起きたものではなく、数年にわたって進行していた」と分析した。
ただし、CNBCは現時点で「ディープシークが欧米のAI企業に及ぼす影響は限定的だ」と分析した。米半導体コンサルティング会社SemiAnalysis(セミアナリシス)は1日の発表で、ディープシークがAIモデル開発に実際に5億ドル(約753億円)以上を費やしたと主張した。
グーグルのAI子会社DeepMindのデミス・ハサビスCEOは10日のインタビューで、ディープシークが「『蒸留』という手法で既存の欧米のLLMからデータを抽出した疑いがある」と述べた。この技術はAIの訓練において広範な生データではなく、既に他のAIが生成した回答を利用して訓練する手法で、時間とコストを大幅に削減できる。
ホフマン氏はディープシークが蒸留技術を活用しているため、「他のAIモデルが必要だ」と述べ、限界を強調した。オープンAIのサム・アルトマンCEOは3日のインタビューで、ディープシークの性能について「新しくない」とし、「オープンAIではすでに同程度のモデルが存在していた」と述べた。電気自動車企業テスラとAI企業xAIのCEOを兼任する米国のイーロン・マスク氏は8日のインタビューで、ディープシークについて「AI革命でには当たらない」とし、「xAIや他の企業が間もなく、より優れたモデルを発表するだろう」と予測した。
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