
トランプ大統領の全面支持を受けるテスラが、トランプ政権2期目の通商政策に警鐘を鳴らす書簡を送っていたことが明らかになった。テスラは匿名で提出した書簡の中で、無差別な関税措置や海外からの報復により、生産に深刻な影響が出ることは避けられないと訴えている。
イギリスのフィナンシャル・タイムズ(FT)が13日に報じたところによると、テスラのミリアム・エカップ通商顧問が米通商代表部(USTR)のウェブサイトに投稿した書簡を引用。USTRは外国の通商政策を精査し、アメリカ企業に不利益をもたらす税金や規制、補助金などを把握するため、主要業界からの意見提出を求めていた。
テスラの書簡はUSTRのジェイミソン・グリア代表宛てに11日に作成され、同日提出されたもので、特定の個人による署名はなかった。
書簡ではトランプ政権2期目の掲げる公正貿易を「支持する」としながらも、「国内の輸出業者は、外国が国内の通商措置に対応する際に不均衡な影響を受けている」と指摘。テスラは「過去の国内通商措置に対し相手国が即座に対抗し、その中には輸入される電気自動車への関税引き上げなども含まれていた」と主張した。また「サプライチェーンの現地化に積極的に取り組んできたが、特定の部品は国内での調達が困難または不可能である」と強調。USTRのグリア代表に対し、アメリカ企業が必要な部品を調達する過程で通商措置による過度の負担を負わないよう、「国内サプライチェーンの限界についてさらなる検討」を促している。
また書簡には、アメリカ企業がリチウムやコバルトなど国内供給が不足している鉱物を輸入する際、関税引き上げなどで過剰なコストが発生しないよう求める内容も含まれていた。
テスラのイーロン・マスクCEOは昨年の大統領選でトランプ氏に多額の選挙資金を提供し、トランプ政権2期目の政府効率化省(DOGE)トップに抜擢された。政界の新たな実力者として台頭したマスク氏は、大規模な政府機構改革の過程で政治的な攻撃を受け、これが国内外でのテスラ不買運動やテスラ店舗への攻撃を引き起こした。これに対しトランプ氏は11日、ホワイトハウスにテスラ車を持ち込んで賞賛した後、「テスラに何かをすれば地獄を見ることになる」と警告している。
マスク氏はトランプ政権1期目当時、トランプ氏に否定的な立場を取っていた。関係者によると、テスラはトランプ政権1期目が無差別な関税攻撃を開始した際も、今回と同様の書簡を政府に送っていたという。
しかし、マスク氏がトランプ陣営に加わった現在、テスラは微妙な立場に置かれている。テスラの関係者はFTに対し、今回の書簡について「両極化した関税政策がテスラを破壊する状況を慎重に表現したものだ」と説明。書簡に署名がない理由については「社内の誰も、書簡を送ったことで解雇されることを望んでいないから」と明かした。テスラは今回の書簡について公式コメントを出していない。
