
30代のイギリス人女性が突然肝不全を発症して3日後に亡くなった。
英メディア「ザ・サン」は最近、健康だったにもかかわらず昨年5月に突然亡くなったケリー氏(35)について報じた。ケリー氏は普段から基礎疾患がなかったが、皮膚の変化や嘔吐の症状が出始めた。顔が赤くなり、皮膚に発疹が現れた。
病院を訪れたケリー氏は、6時間待った末に診察を受けた。血液検査の結果、肝臓に問題があることが判明し、鎮痛剤と制吐薬を処方された。急性肝不全と診断されたケリー氏の状態は徐々に悪化し、意識が朦朧として、家族とのコミュニケーションすら不可能になった。臓器の機能が低下したため集中治療室に移されたが、ケリー氏は最終的に亡くなった。
当時の状況について、ケリー氏の妹ジェシカ氏は「医療スタッフがなぜ抗生物質を投与しなかったのか疑問だ」と述べ、「肝移植が必要な状況だったかもしれないのに、病院は何の対策も講じなかった」と主張した。ケリー氏の死後、家族は解剖を要請し、医療スタッフの対応や病院のシステムなどについて、真相究明に向けて問題提起に取り組んでいる。
沈黙の臓器「肝臓」が壊れると他の臓器にも悪影響
この事例で女性に現れた肝不全は、肝機能が急激に低下し、肝臓が正常な生理機能を果たせなくなる病気だ。肝臓は人体最大の臓器で、各種栄養素の代謝・貯蔵、解毒作用を担う。特に、体内に入った毒素や老廃物の75%以上を解毒する。
そのため、肝不全が発生すると体内の毒性物質の処理機能が低下し、毒性物質の濃度が上昇。脳や他の臓器にも悪影響を及ぼす。しかし、肝臓が悪化する前には特別な症状がない。診断時にはすでに病気がかなり進行していることが多い。肝臓が「沈黙の臓器」と呼ばれる所以だ。
急性肝不全、原因と症状は?
急性肝不全は、既存の肝疾患がない人にも発症する可能性がある。肝疾患があっても、肝硬変でない人の肝機能が急激に悪化し、26週以内に意識の変化や血液凝固障害が発生する状態を指す。肝細胞が急激に破壊され、正常な機能を果たせなくなる。
最も一般的な原因は、薬物とウイルス性肝炎だ。上記の事例のように原因不明の場合も約30%ある。初期症状には、記憶力の低下や精神の混乱、興奮などがある。悪化すると、腎臓や肺などの他の主要臓器が徐々に機能不全に陥り、昏睡状態や死亡に至る可能性がある。
慢性肝不全は、慢性肝疾患を患う患者に発生する。アルコール性肝疾患、ウイルス性慢性肝炎などの基礎疾患が原因だ。皮膚や眼球の白目が黄色くなる黄疸、かゆみ、腹部膨満などの症状が現れる。
急性でも慢性でも肝不全発症時は迅速な入院治療が必要
急性でも慢性でも、肝不全が発症した場合は直ちに入院治療を受ける必要がある。抗生物質や高用量のN-アセチルシステインなどの投与が求められる。肝不全患者にとって肝移植は、臓器の生存が期待できる最も確実な治療法だ。
ただし、現実的には肝移植の実施は容易ではない。資金や技術があっても、ドナー不足により移植が困難な場合が多い。そのため、感染症や血液凝固障害などに対する内科的治療に重点を置く肝不全患者が多い。自然回復するまで、あるいは肝移植を受けられるまで、患者の状態を維持し改善させることが治療の焦点となる。