
韓国で初めて牛結核菌がヒトに感染
韓国で初めて牛の結核菌(Mycobacterium bovis)がヒトに感染したケースが公式に確認された。
今月17日、韓国・疾病管理庁の結核政策課・診断分析課の共同研究チームは、昨年1月に結核と確定診断された50代のA氏の感染経路を調査した結果、牛の結核菌が伝播したとの最終診断を発表した。
「牛結核菌」は主に殺菌をしていない牛乳や乳製品の摂取を通じてヒトに感染するケースが多いとされている。
欧州食品安全機関(EFSA)と欧州疾病予防管理センター(ECDC)が発表した欧州連合の「ワンヘルス・アプローチに基づく人獣共通感染症報告書」によると、2023年の1年間で牛結核菌のヒト感染のケースは計138件であった。
世界保健機関(WHO)の世界結核報告書では、2019年に新規結核症が発症したケースのうち約14万件(1.4%)が人獣共通感染症と確認され、そのうち1万1,400件(8.1%)が死亡に至ったと報告されている。
韓国・疾病管理庁によると、A氏は2023年1月にリウマチ疾患のため大学病院で実施された胸部X線検査で結核の疑いが浮上し、2か月後に肺結核と最終診断された。
肺結核の診断が下されると、地域の保健当局は約20年間、獣医学実験室で勤務し、血液検体の分離や組織病理検査などの業務を担当していたA氏を人獣共通結核の高リスク群に分類し、結核陽性培養検査の結果を韓国・疾病管理庁に報告した。
その後、韓国・疾病管理庁はA氏の結核菌検体に対する精密な遺伝子分析と疫学調査を経て、約1年後の2024年1月に牛結核菌感染と確定した。
当時、A氏には結核の既往歴や家族歴はなく、無症状であった。彼は診断後の6か月間薬を服用し、入院せずに治療を終了した。現在は健康な状態であるという。
当時A氏と接触した15名(濃厚接触者8名、日常接触者7名)に対しても胸部X線検査と潜在性結核感染症検査が行われ、そのうち2名から結核菌陽性が確認されたが、現在は全員治療が完了している。
韓国・疾病管理庁は、牛結核菌に汚染された針や目に入った生物学的物質、目に見えない皮膚の擦り傷などを通じてヒトに感染する可能性があると分析した。
A氏の場合、疫学調査で普段から針やメスによる事故を防ぎ、動物の体液への曝露を最小限に抑えるため使い捨て手袋とガウンを常に着用していたが、過去に針に刺さる事故が起きていたことが確認された。
ただし、韓国・疾病管理庁は結核感染の潜伏期間は個人の免疫状態によって異なるため、正確な感染時期はまだ不明であると述べた。
韓国・疾病管理庁の関係者は「人獣共通結核の直接的な伝播経路は確認されていないが、A氏が実験室で人獣共通結核の検体を扱う業務を長期間担当していたことから、実験室での曝露の可能性が高い」と判断した。そして「高リスク職種における厳格な個人防護具の使用と、人獣共通結核に対するワンヘルスの観点から、強化された監視体制構築の重要性を示す事例」だと述べた。