フランスの総選挙で左派連合の新人衆戦線(NFP)が勝利したものの、スペクトルが広範囲であるうえ、首相候補をめぐって意見が極端に分かれているため、当面はガブリエル・アタル首相が政府を率いる見通しだ。
NFPは極左から中道左派、緑の党まで、色が異なる政党が極右国民戦線(RN)の浮上を阻止するために連携したが、総選挙で勝利した今になり、内部分裂の様子が見受けられる。
2位を記録したエマニュエル・マクロン大統領のアンサンブルが中道会派と連携して、政府を組織するのが最も可能性の高いシナリオとして浮上している。
オリンピック期間中の政府維持
ファイナンシャルタイムズ(FT)など海外メディアによると、マクロン大統領は、総選挙で政権与党が多数派地位を失ったが、当面は現政府の構成を維持するという立場を8日(現地時間)に明らかにした。
フランス大統領宮殿エリゼ宮は「大統領が、ガブリエル・アタルに国家安定保障のために当面首相職を継続するよう要請した」と発表した。ブリュノ・ル・メール財務大臣、ジェラルド・ダルマナン内務大臣も当面は大臣職を継続する。
パリ五輪は今月26日から開始される。
7日に行われた決選投票で、NFPが180議席を確保して1位となり、マクロン率いる中道連合アンサンブルが159議席で2位、そしてマリーヌ・ル・ペンの極右・国民連合(RN)が143議席で3位となったことが明らかになった。
内部分裂のNFP
NFPは予想外の大勝を収め、第一党に浮上したが内部分裂は、深刻化している。今回の政治連合は、RNの浮上を阻止するため結束した連合のため結束力は乏しい。特に、首相候補を選出にあたり意見が激しく対立している。
社会党、緑の党など5つの政党が参加したNFPの中で、最も多くの議席を確保したのは、反資本主義者ジャン=リュック・メランション率いる極左連合の不服従のフランス(LFI)だ。
LFIは1位を占めたものの、NFP連合内の他政党では、メランションが首相になることに反発感を抱いている。LFIに次いでNFP内で2位を記録した社会党のオリビエ・フォール代表は8日、フランスインフォラジオのインタビューで、「メランションはNFP内で最も分裂を引き起こす人物であり、彼は政府を率いるには適していない」と主張した。
フォール代表のインタビューから数時間後、メランションは次期政権の準備を急ぐ様子だった。彼は「高い税金、高い財政支出を特徴のNFPの公約を推進する」と誓った。
LFIの高官はRTLラジオインタビューで、「メランションが首相になる資格がないわけではないと」主張した。緑の党のマリーヌ・トンドリエ代表は「誰が最も多くの議席数を獲得するかを基準に(首相の)争いをするべきではない」と述べた。
アンサンブルと中道派の連携
NFPが単一の政党ではなく、左派政党で構成された多様なスペクトルを持つ緩い政党連合という点は、フランスの新政府がNFPが主導する形で構成されない可能性を予告している。
マクロンは既に二次決選投票の前に、極左のメランションや極右のルペンを排除した政府構成計画を立てた経緯がある。マクロンは、両極端政党を除外し社会党、緑の党などのより穏健な左派、また保守党の共和党と連携して政府を構成する可能性が高いとみられる。
市場の不安感の高まり
不確実性を嫌う金融市場は、政治不安で混乱している。RNが過半数の政党にならないとはいえ、1位になるという見通しが食い違い、上下に動き続けた。
フランスパリのCAC40指数は下落トレンドでスタートし、再び上昇したものの、結局0.6%下落して取引を終えた。
ヨーロッパ市場全体を広範囲に反映するストックスヨーロッパ600指数が、0.03%のほぼ横ばいで取引を終えたことに対し、下落幅は大きかった。
また、ユーロの価値はドルに対して0.1%下落した。ユーロはユーロあたり0.1%下落した1.0830ドル(約174円)を記録した。