手の甲の血管が浮き出て目立つ症状は「手の甲静脈瘤」と呼ばれ、重篤な疾患ではないものの、見た目の問題だけでなく、血液循環の異常を示唆する可能性がある。本記事では手の甲静脈瘤について解説する。
血液循環が悪化すると、血液が指先に集中し、手の甲の血管に血液が充満することで血管が浮き出ることがある。このような状態では、手のしびれを伴うケースも少なくない。また、加齢や減量による体脂肪の減少で手の甲の皮膚が薄くなった人にも多く見られる現象だ。皮膚が薄いほど血管は目立ちやすくなる。
手の甲静脈瘤自体は疼痛を引き起こさず、健康上の問題も特にないが、血管の隆起が著しく精神的な負担となる場合には改善法がある。
まず重要なのは、手への血液集中を防ぐことだ。腕を心臓よりも高く上げるストレッチや、指先から手の甲を通って脇へと向かう方向での腕のマッサージが効果的とされる。
一方で、ハンドグリッパーやダンベルを用いた握力トレーニングは避けるべきである。手の甲の静脈がより顕著になる恐れがあるためだ。
血管外科や胸部外科では、手の甲静脈瘤に対する手術も可能だ。手の甲を切開し、隆起した血管周辺の静脈を部分的に摘出する手術となる。ただし、軽度の場合は生活習慣の改善を優先的に検討すべきだろう。
これに対し、下肢静脈瘤は手の甲静脈瘤とは異なり、健康面での深刻な影響をもたらす可能性が高い。静脈弁の機能不全により心臓への血液が逆流することが原因となるため、症状が認められた場合は必ず医療機関での治療が必要となる。
下肢静脈瘤の予防には、膝までの締め付けの強い衣服や靴を避け、足首の可動性が確保された靴を選択することが重要である。また、長時間の立ち仕事や座位姿勢を避け、こまめなストレッチで血液循環を促進する習慣を心がけることも効果的だ。