音楽がアルツハイマー患者に良い影響を与えるという研究結果が発表された。
先月26日、神経心理学者のバーバラ・コルトゥスカ=ハスキン博士がアメリカの心理学メディア「サイコロジー・トゥデイ」に、アルツハイマー患者に対する音楽の効果について解説を寄稿した。
1993年の研究(Lord, T. & Garner, E.)では、アルツハイマー型認知症を患う介護施設入居者60名を対象に実験が行われた。参加者は3つのグループに分けられ、それぞれ異なる活動を行った。第1グループは毎日1920年代と1930年代のビッグバンド音楽を聴き、第2グループはパズルを解き、第3グループは絵を描いた。6カ月後、音楽を聴いたグループの記憶力が向上し、精神状態もより活性化していることが明らかになった。
ギリシャで実施された別の研究(Efychios, A. et al. 2021)では、アルツハイマー患者32名を軽度、中等度、重度に分類し、30ヶ月間にわたり6ヶ月ごとに精神状態に関するテストを実施した。参加者はピアノ、マラカス、スクレイパー、ドラムなどの楽器を使用し、個別およびグループセッションに参加した。その結果、全参加者の精神状態に改善が見られた。
カナダの研究(Byrns, A. et al. 2020)では、仮想環境を用いた音楽療法が設計された。参加者はクラシック音楽と現代音楽を含む8曲(各30秒)を聴き、実験の開始時と終了時の感情に関するアンケートに回答した。その結果、記憶力と注意力が向上し、ポジティブな感情と心の安らぎの向上が確認された。
アルツハイマー患者の音楽療法に関する包括的なレビュー(Matziorinis, A. & Koelsch, S. 2022)では、音楽療法が有益な効果をもたらすことが明らかにされた。音楽はアルツハイマー患者の気分を改善し、うつや不安を軽減するだけではなく、自伝的回想、記憶、言語の流暢性など一部の認知機能を向上させた。
科学者たちは、 音楽が関与する神経ネットワークは、従来の時間的記憶を担う神経経路とは異なると考えている。音楽記憶の回復は、側頭葉、前頭葉、頭頂葉の内外に広がるネットワークと関連しているという。
ハスキン博士は「アルツハイマー患者の介護者は、患者の好きな曲を集めたプレイリストを作成し、食事や休憩時間に再生すると良い。これは、患者の不安を軽減するのに役立つかもしれない」と述べ、さらに「年齢に関係なく音楽活動を始めることが望ましい。脳のケアに遅すぎることはない」と付け加えた。