①「水の都」深刻な状況
イタリアの水上都市ベネチアは、気候変動と観光公害に悩まされている。「水の都」ベネチアは、120個以上の島と177個の運河で構成されている国だ。しかし数年前から異常気象により深刻な問題を抱えているという。
昨年の夏、イタリアは猛暑に見舞われ、ベネチアも気温が38度まで上昇したという。文化財が猛暑にさらされ、火災などの二次的な危険にもさらされた。昨年2月には深刻な干ばつにより、運河でのゴンドラ運営ができないほどだった。
特にベネチアは洪水が頻繁に発生すると言われている。地球温暖化により水面が上昇し、都市が水没しているのだ。
2019年には53年ぶりの最悪の洪水被害により、ベネチア全体が水没した。当時、集中的な豪雨と高潮が重なり、周辺の海水の水位が最も高くなったのだ。都市のほとんどが浸水し、日常生活が不可能なほどだったという。
運河に停泊していた水上タクシーは、増水により路地に乗り上がってしまう状態だった。1,200年の歴史を誇るベネチアの名所「サン・マルコ大聖堂」にも海水は押し寄せた。まるで海の上に浮かんでいるような姿となり、悲しい印象を与えていたという。サン・マルコ大聖堂は20年の間に、4回も水没被害を受けた。
「水の都」ベネチアの名物である露天カフェも元の姿を失ってしまうほどだった。ほとんどの商店は浸水による被害により、絶望的だったという。海水が押し寄せたことで、感電による人的被害も発生した。
②観光公害による問題も
ベネチアは、ラグーンの泥底に木製の柱を立て、干拓事業によって作られた都市である。街の基盤が泥ということから、毎年1~2mmずつ沈んでいるという。ベネチア周辺のラグーンの水位は毎年2mmずつ上昇している。それだけでなく、地球温暖化による海面上昇も加わっていて、ベネチア周辺の平均水位は1900年以来14cmも上昇したといわれている。
さらに、世界中から押し寄せる多くの観光客によって状況はさらに悪化しているのだ。毎年320万人の観光客が「水の都」ベネチアを訪れている。
特にベネチアは大型クルーズ会社の人気寄港地であり、3,000~4,000人が乗船したクルーズが停泊する場所である。クルーズ船1隻が港に停泊している間、自動車1万2千台分の排気ガスを排出するのだ。クルーズ船が港を通過するたびに巨大な波を発生させ、港湾の基盤施設の沈下を引き起こすこともあるという。
③ ベネチアでよく目にする「アックア・アルタ」
ベネチアは街が水没してしまうという被害を頻繁に受けている。毎年9月から翌年4月の間に潮位が上昇する「アックア・アルタ(Aqua alta)」により水難に見舞われているのだ。しかし、問題は真夏でもアックア・アルタが発生するという点である。
ベネチア運河は下水道機能も兼ねているため、水質が非常に悪い。悪臭だけでなく、想像以上に汚れているのだ。
ベネチアに水難が発生すると、旅行者は靴を脱いで水浸しの街を楽しみという。水で満たされた広場で泳ぐ人の姿も目にできるだろう。このような行動は、下水道に入って泳ぐのと同じである。地元の人々は、道が水で溢れてしまった際に絶対に水には入らないと話している。
SNSではベネチアの実際の状況を収めた映像が拡散している。映像に映っているベネチアは、道や商店などに水が溢れ返っているのだ。人々は水浸しのレストランで食事をしたり、露天カフェに座っている人も靴や服が濡れないようにビニールで足を包んでいる。人々の表情は慌てた様子はなく、ゆったりとしており、むしろ笑いながら食事をしたりコーヒーを飲んだりしているのだ。
この映像が公開されると、海外のネットユーザーたちからは驚きの声が上がった。ある現地人は「このような現象は頻繁に起こりうる自然な現象だ。ただのアックア・アルタなだけで、それ以外のなにものでもない」というコメントを残したという。
海外のネットユーザーは「電気と水が一緒に? これはとても危険な状況だ」「ベネチアは美しいが、このような経験は不快感として残るだろう」「本当に残念だ。ベネチアが徐々に沈没している」「汚染水旅行」などの反応を見せた。
ネットユーザーたちはは食中毒や腸炎などの問題についても、懸念の声をあげている。また、あるレストランに水が溢れ返り、レストランが大混乱に陥った様子も目にすることができるだろう。従業員は水が押し寄せるのを阻止するために駆けつけたが、間に合わなかったのだ。
アックア・アルタは単に水が氾濫するだけではない。ベネチアでは頻繁に起こることだというが、大きな問題を引き起こす可能性があるのだ。