爪は我々の健康状態全体を反映する重要な指標の1つだ。手の爪や足の爪に黒い筋が縦方向に現れたり、黒く変色したりする場合、これを単純な美容上の問題として見過ごすのではなく、すぐ病院に行くべきだ。このような爪の変化について、専門家たちは爪の悪性黒色腫や爪甲色素線条の可能性を警告している。
今年1月、ソウル大学病院はニュース1を通じて「爪の黒い変色は『爪甲色素線条』と呼ばれ、主にメラニン細胞の活性化や過剰な増殖、または病原菌の侵入などによって生じる」と伝えた。ソウル大学病院皮膚科のムン・ジェホ教授は「メラニン細胞が色素を過剰に生産する場合は、爪白癬、反復的な物理的刺激などが原因であることが多い」と説明した。
また、「爪白癬、爪を噛む、妊娠、外傷、甲状腺疾患などの内分泌系疾患もメラニン細胞の増加を引き起こすことがある」と付け加えた。報道によれば、メラニン細胞の増加による場合は、母斑(ほくろ)や皮膚がんの一種である「悪性黒色腫」である可能性があるとのことだ。悪性黒色腫は、メラニン細胞ががん細胞に変化した状態で、初期には特別な症状が現れないため、診断が遅れる可能性がある。
東洋人の場合、爪や手・足の裏に頻繁に現れる傾向がある。セブランス病院皮膚科のチャン・ギヤン教授は「悪性黒色腫は皮膚に発生するがんの中で最も致命的だ」と伝えた。そして、「韓国では悪性黒色腫の発生頻度は年間600人程度で、西洋に比べては低いが、再発したり内部の臓器に転移したりすることが多く、予後予測が難しい。重篤な場合、転移のせいで死亡することもある」と明らかにした。
今年1月にソウル大病院皮膚がん協議センターの研究チームによる研究結果によれば、悪性黒色腫が局所的に発生した場合は広範囲な切除手術で治療することができ、その場合の5年生存率は98%以上と高い。しかし、リンパ節に転移すると生存率は65%に減少し、遠くの臓器に広がると生存率は25%未満に急激に低下することが分かった。
悪性黒色腫の診断には組織診検査が必須だ。しかし、爪の組織診検査は痛みが強く、検査後には爪が変形するリスクが高い。したがって、疑わしい場合にのみ組織診検査を行い、皮膚科の医療スタッフは複数の要素を考慮して必要性を判断する。具体的には、爪に黒い筋が3㎜以上ある場合、様々な色調を持つ場合、非対称性を示す場合、黒色の境界が不明確な場合、周辺に色素沈着がある場合などが悪性黒色腫を疑う基準となる。
過去には手足の指の切断が治療法として検討されていたが、最近では病変の根の深さが深くなければ当該部位のみを切除し、手足の指の機能が保持できる手術を行っている。このような手術基準について、チョン教授の研究チームは、悪性黒色腫患者140人を対象に治療後の再発や死亡例を分析した結果、悪性黒色腫の厚さが0.8㎜以下であれば、再発リスクを高めずに、従来の手術基準(0.5㎜)に比べて切断手術を19%まで減らすことができることを明らかにした。
この研究結果は、昨年初めに国際学術誌「アメリカ皮膚科学会誌」に掲載された。チョン教授の研究チームは「この研究を通じて、悪性黒色腫患者の発生部位を切断せずに再発リスクを低減しつつ、機能的に保持できる手術ガイドラインを作成した」と伝えた。