
最近発表された2つの研究が、「ゼロカロリー」という名前の裏に隠された健康リスクを警告している。甘さはそのまま、砂糖はゼロ。ダイエットの味方として多くの人が選ぶゼロ飲料が、実は「うつ病」と関連している可能性があるという。

ハーバード大学とマサチューセッツ総合病院の共同研究チームは、2003年から2017年までアメリカの中年女性12万人以上を対象に、食習慣とメンタルヘルスの関係を追跡調査した。その結果、1日に9回以上ウルトラ加工食品(冷凍食品、シリアル、スナック、そして人工甘味料を含むゼロ飲料など)を摂取していた女性は、1日4回以下の摂取者に比べて、うつ病リスクが49%も高いことが分かった。特に人工甘味料入りの飲料やデザートを頻繁に摂取する人ほど、その傾向は顕著だった。
ここで言う人工甘味料とは、アスパルテーム、スクラロース、サッカリンなどの成分を指す。砂糖の数百倍の甘さを持ちながら、カロリーはほぼゼロである。そのため、体重管理や血糖コントロールを目的とする人々にとっては魅力的な選択肢となっている。しかし、これらの甘味料が腸内細菌のバランスを乱したり、脳内で気分を調整する神経伝達物質「セロトニン」に影響を及ぼす可能性が、これまでもたびたび指摘されてきた。
2024年4月、国際学術誌「Journal of Affective Disorders」に掲載された米国国立衛生研究所(NIH)の研究でも、この懸念を裏付ける結果が出ている。研究チームは2007年から2018年まで、アメリカの成人約3万1000人の食習慣とうつ病診断の関係を分析した。その結果、人工甘味料を含む食品を頻繁に摂取する人は、そうでない人に比べて有意にうつ病の診断率が高かった。特にゼロ飲料を毎日飲んでいた人は、うつ病の診断率が全体平均より最大26%以上も高いという。
いずれの研究も、人工甘味料とうつ病の「因果関係」を断定しているわけではない。しかし、繰り返し示される「関連性」は無視できない。観察研究であるため慎重な解釈が必要だが、感情に敏感な人ほど人工甘味料に反応しやすい可能性があると研究チームは指摘する。実際、甘味料が気分に影響を与えるという研究は動物実験でも一部確認されている。
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ゼロ飲料は確かにカロリー摂取を抑える点では効果的だ。しかし、それが即ち「健康に良い」とは限らない。ゼロ飲料は単に砂糖を抜いただけの飲み物ではなく、「人工甘味料」という新たな化学物質で置き換えられた飲料であることを忘れてはならない。これらの成分は小腸で吸収されずに大腸まで到達し、腸内環境に影響を与える。その結果、身体だけでなく、心の健康にも微妙な変化をもたらす可能性があると専門家たちは警告している。