ドイツの国民車として
知られていたフォルクスワーゲン、
相次ぐ問題に直面
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かつて隆盛を誇ったドイツの自動車メーカー「フォルクスワーゲン」。現在、その経営状況は深刻な局面を迎えている。独有力週刊誌シュピーゲルによると、「フォルクスワーゲングループの電気自動車80万台の位置情報が数カ月間にわたりインターネット上に流出していた」という。この情報は同社従業員による内部告発で明らかになった。
フォルクスワーゲンの電気自動車データは、グループのソフトウェア子会社カリアドがセキュリティ管理を担当している。この内部告発者は電気自動車の位置情報流出の事実とシステムの脆弱性を公表。シュピーゲルはこの情報を基に、ドイツの政治家2名の移動を正確に追跡できたとしている。
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データ管理の不備
大規模な情報漏洩が発覚
シュピーゲルの報道によると、「フォルクスワーゲングループの電気自動車46万台の詳細な位置情報と車両所有者情報など、テラバイト規模のデータにアマゾンのクラウドストレージからアクセスが可能だった」という。加えて「ハンブルク警察の車両35台、政治家、企業のCEO、連邦情報局職員、在独米空軍ラムシュタイン基地の運転手に関する情報も確認された」と明らかにした。
ドイツのセキュリティハッカー集団「カオスコンピュータクラブ」は、この事実をカリアドに即座に通報。カリアドは本件を受け、対策に着手した。同社はシュピーゲル取材に対し「この脆弱性はシステムの設定ミスによるもの。当社は個人を特定できるようなデータの統合は行っていない」と説明したが、事態の重大性から、その説明の信憑性を疑問視する声が上がっている。
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経営難で大規模再編
工場売却も視野に
フォルクスワーゲンの信用失墜はこれにとどまらない。現地時間12月20日、海外メディアは「フォルクスワーゲンが2030年までにドイツ国内で3万5,000人の人員削減を含む再編計画を発表した」と報じた。これはドイツ国内の従業員12万人の約3割に相当する。
同社の労使間では、強制解雇を避け、早期退職制度や高齢者の勤務時間短縮など、社会的に受け入れられる方法での人員削減で合意。閉鎖が検討されていた小規模工場については、自動運転開発拠点への転換もしくは売却を検討しているという。
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生産体制も見直し
管理職がボーナス放棄
これに伴い、同社はドイツ国内の年間生産能力を73万4,000台削減。年間40億ユーロ(約6,500億円)超のコスト削減計画も発表した。今後、ID.3とクプラ・ボーンはヴォルフスブルク工場で、ゴルフはメキシコ・プエブラ工場での生産となる。ID.4とID.7は引き続きエムデン工場で、Tロック・カブリオレは2027年までオスナブリュック工場で、アウディQ4 e-トロンはツヴィッカウ工場でそれぞれ生産される。
経営状況の悪化を受け、管理職4,000人は2025年と2026年の年収約1割に相当するボーナスの受け取りを辞退。さらに従業員労組はオリバー・ブルーメCEOを含む経営幹部にも給与1割以上の削減を求めている。フォルクスワーゲンがこの危機を克服し、かつての威信を取り戻せるのか、今後の動向が注目される。