米ジャンクボンド(債権回収の可能性が低いとされる債権)に投資するファンドからの資金流出規模が4年ぶりの最大を記録したことが分かった。
米国経済が景気後退に陥るかもしれないとの不安感や、連邦準備制度(FRB)が利下げに乗り出すことにより利子収益が減少するかもしれないという不安感が資金流出を引き起こしたとの分析が出ている。
米株式市場が先週1週間暴落と急騰を繰り返し、全体としては比較的大きな衝撃なく終了したとはいえ、投資家たちの間の景気後退への懸念が完全に払拭されたとは考えにくい、ということが今回ジャンクボンドの資金流出によって確認された。
25億ドルの流出
フィナンシャル・タイムズ(FT)は10日(現地時間)EPFRの資料を引用し、7日までの1週間でジャンクボンドファンドから投資家が引き上げた資金規模が25億ドル(約3680億円)に達したと報じた。主に上場投資信託(ETF)から資金が流出した。
流出規模が25億ドルに達したのは、世界の金融市場がコロナ禍で混乱した2020年初頭以来4年ぶりの最大である。
米労働省が2日に公開した7月の雇用動向で米労働市場が予想以上に急激に低迷していることが確認された後、景気後退への懸念が高まり、資金が代表的なリスク資産であるジャンクボンドから流出したのだ。
金利引き下げへの懸念
投資家たちは米国の景気後退に対抗してFRBが攻撃的な利下げに乗り出すのではないかと懸念し、ジャンクボンドから資金を引き抜いた。
景気後退の時期に最も大きな打撃を受けるのはジャンクボンドを発行した信用格付けの低い企業である可能性が高く、さらに金利が低下すればジャンクボンドの利子収益も減少するからである。
信用格付けが低い企業が発行するジャンクボンドはほとんど変動金利が適用されるため、基準金利が低下すると支払金利も低下する。
ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネージャー、ジョン・マクレイン氏は、金利が急激に低下するという市場の見通しが正しければ「変動金利の有価証券の需要はかなり減少するだろう」と述べた。
同氏は続けて「さらに金利引き下げが景気鈍化の結果であることは、信用格付けの低いジャンクボンドを発行する企業に衝撃を与える」とし、「ジャンクボンド市場には二重の打撃である」と付け加えた。
市場の懸念は過剰なようだ
しかし、ジャンクボンドの流出は実際の経済状況に比べて過度であるとの分析が出ている。
まず、FRBが急激な利下げに乗り出すという見通しが後退している。
緊急利下げの主張は消えつつあり、FRBの高官たちはインフレ(物価上昇)が低下する流れが確認されなければ利下げは可能でないという立場を再確認している。
FRBが来月17〜18日に定期的な連邦公開市場委員会(FOMC)の前に緊急FOMCを開いて0.75%ポイントの利下げを実施し、9月にも0.75%ポイントの追加引き下げに乗り出すべきだと主張していたペンシルベニア大学ウォートンスクール名誉教授のジェレミー・シーゲル氏は、8日に米国の週次新規失業保険申請者数の急減統計発表された後、一歩引いた。
米国経済が景気後退に陥るという懸念は8日の週次失業保険統計後、大きく和らいだ。
専門家たちは1兆3000億ドル(約190兆円)規模のジャンクボンド市場が先週大規模な資金流出を経験したのは、投資家たちの過敏反応によるものであり、むしろこれを通じて安値で買収できる機会が訪れたと指摘している。
マクレイン氏は7月の雇用動向に関する市場の反応は過度であり、FRBが「ゆっくりと低い引き下げ」に乗り出すだろうと予測する投資家たちにとっては買いの機会であると述べた。
また、FRBの利下げが資金圧迫を受けている信用格付けの低い企業にとって恵みの雨のような役割を果たすため、市場の見通しが明るいとの指摘もある。
ただし、バンク・オブ・アメリカの戦略担当ネハ・コーダ氏は、もし経済の見通しが急激に悪化すればジャンクボンド全般にも波が及ぶ可能性があると警告した。