人工知能(AI)のブームにより半導体市場がスーパーサイクルに突入したとの分析が出ている中、AI向け半導体基板市場が新たな収益源として浮上している。特に、日本と台湾が先行していた「フリップチップボールグリッドアレイ(FC-BGA)」市場に、サムスン電機とLGイノテックが参戦し製品量産と顧客確保に注力している。
8日、関連業界によれば、サムスン電機は今年第2四半期からベトナム工場をFC-BGA製品の量産に移行した。ベトナム工場は、サムスン電機が1兆ウォン(約1074億4618万円)以上を投資して構築したFC-BGA専用生産基地だ。
半導体用基板は、チップの下に重ねる部品で、半導体と電子機器が円滑な接続を助ける役割を果たす。FC-BGAは、電気信号が多い高性能半導体チップと、メイン基板をフリップチップバンプで接続する高集積パッケージ基板のことをいう。基板がチップに密着しているため、信号損失が少なく、情報伝達速度が速い。そのため高性能計算(HPC)用半導体に適用される。
近年、AI市場が拡大する中、ハイパースケールデータセンターの高性能FC-BGAに対する需要が継続的に成長するとの予測がされている。特にサーバー用FC-BGAはグローバルビッグテックの需要が高いが、これらを顧客として確保してこそ競争を優位に進めることができる。しかし、高度な技術力が必要で参入障壁が高く、後発企業参入には厳しい市場と呼ばれる。
世界的にFC-BGA製造可能な企業は10社未満で、現在日本のイビデンと新光電気工業、台湾のユニマイクロンなどが市場を主導している。2022年の売上基準で日本と台湾企業がFC-BGA市場シェア率69%を占めており、韓国企業はわずか10%程度であった。
AI時代の次世代収益源として、FC-BGAを選定したサムスン電機は、最近AMDにデータセンター用の高性能半導体基板の供給を開始した。データセンターは延床面積2万2500平方メートル規模で、最小10万台以上のサーバーを超高速ネットワークで運営するデータセンターだ。大規模なコンピューティング性能とストレージ容量を提供する。
クラウドコンピューティングとAI産業の成長、ビッグデータ処理、その他高性能コンピューティング作業の増加により、ハイパースケールデータセンターの需要は着実に増加することが予想される。
サムスン電機は、2022年末からAMDにサーバー用FC-BGAを納品を始め、初めてサーバー用FC-BGAの量産を開始した。AMDに先立ち、クアルコムにもAI半導体用基板の供給を成功させた。米国クアルコムに納品する製品は、1秒あたり最大45兆回の演算が可能なARMベースのAI半導体に適用される。
サムスン電気パッケージ支援チームのキム・ホンジンチーム長は「ベトナムの新工場は、第2四半期から売上を伸ばし始め、主要取引先用の製品承認が継続的に追加されている」とし、「承認と量産スケジュールを順調に進め、下半期のFC-BGA業績改善に貢献できるようにしたい」と述べた。
LGイノテックも今年2月、慶尚北道(キョンサンブクド)亀尾(グミ)工場でFC-BGAの量産を開始した。LGイノテックは、2022年にFC-BGA事業に本格的に参入し、LG電子から亀尾工場を買収するなど、現在まで1兆4000億ウォン(約1504億8029万円)を投資した。
LGイノテックは現在、グローバルビッグテックを対象にサンプルを提供し、プロモーションを進めている。特に自社の生産工場にAIの工程を導入した点を強調している。FC-BGAは大面積基板に異物の混入確率が高いため、手作業の代わりにAI工程で進行することで収率が向上する。 LGイノテックのムン・ヒョクス代表は、3月の株主総会でFC-BGAに関連して「早ければ今年8月、遅くとも10月には売上が上がるだろう」と言及した。
一方、ビッグデータ・機械学習(マシンラーニング)などAI市場が拡大し、FC-BGA市場も急成長している。富士フィルム総合研究所によると、グローバルFC-BGA市場規模は2022年80億ドル(約1兆1799億4100万円)から2030年164億ドル(約2兆4188億7905万円)と2倍以上の拡大を見せると予測されている。