パレスチナ自治区ガザ地区でイスラム組織「ハマス」の人質になっていたアメリカ人男性1名を含む6名の遺体が発見・収容されてから、イスラエル全土では人質解放の合意に至らなかった政府に対し、批判の声が高まっている。
イスラエル全土で70万人を超える人々がデモに参加するなど、ガザ戦争のターニングポイントになるのではとの見方も出ている。
1日(現地時間)、「AP通信」など複数の海外メディアによると、同日夜、イスラエルの複数の主要都市で抗議デモが行われた。デモの参加者たちははネタニヤフ政権に対し、ハマスとの停戦交渉の即時成立、そして、人質解放を訴えた。
パレスチナ自治区ガザ地区で人質になっているイスラエル人の家族団体「人質・行方不明者家族フォーラム」は、イスラエル全土でおよそ70万人が抗議に参加し、イスラエル最大の商業都市テルアビブでは55万人以上がデモに参加したと伝えた。
これは昨年10月7日の開戦後に行われた抗議デモの中で最大規模である。
遺族代表は「ガザ地区に残る人質の生存は政府の判断にかかっているといっても過言ではない。政府は、一度立ち止まる必要がある」と強調した。
高速道路を封鎖したデモ隊と警察が衝突して警察が放水するなど、イスラエル警察は29人を破壊行為や警官襲撃などの疑いで逮捕したと発表した。
エルサレムでも閣議が開催中の首相府前に人質被害者の家族など数百人が集まって抗議運動を展開した。彼らは人質6人の死亡について、イスラエル政府にも責任の一端があると訴え、ネタニヤフ首相の辞任を強く要求した。
イスラエル最大の労働組合「労働総同盟(ヒスタドルート)」も1日にゼネストの実施を呼びかけ、2日よりゼネストを開始した。空路の要であるベングリオン国際空港が一部のサービスを中止しているほか、多くの地域でバスや路面電車の運行が停止・縮小されている。
医療機関も業務を縮小し、銀行の業務は停止されている。労組議長は「ユダヤ人の人質がガザのトンネルで殺されるのを見過ごしているわけにはいかない」と政府に停戦合意を迫った。
イスラエル政権内部での意見対立も顕在化している。
CNNによると、ネタニヤフ首相と対立してきたガラント国防相も閣議の中で「人質が亡くなったことは恥辱である」とし、「これ以上の犠牲者を出さないようにするためには時間がない」と現政府の停戦交渉の失敗について強く批判した。
諸外国ではイスラエルの今回の大規模デモがガザ戦争のターニングポイントとなる可能性があると見ている。
AP通信は自国内で戦争に関し分裂状態にあるイスラエルが、今回の大規模デモによって方針を変える可能性は十分にあると分析した。
イギリスの「ガーディアン」も今回のデモが停戦と人質解放を求める動きの追い風となる可能性があると報じている。