フィナンシャル・タイムズ(FT)は現地時間の4日、米ジョー・バイデン大統領が日本製鉄によるUSスチール買収を阻止すると報じた。
この報道に先立ちUSスチールの最高経営責任者(CEO)であるデビッド・ブリット氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、日本製鉄が大規模な投資を約束したとし、この巨額の資金と日本の新技術がなければ、USスチールは米国内の複数の工場を閉鎖し、本社もペンシルベニア州ピッツバーグから他の場所に移転せざるを得ない可能性があると警告していた。
売却禁止
しかし、関係者によると、民主党のカマラ・ハリス副大統領に共和党のドナルド・トランプ前大統領まで、両党の大統領候補が売却に反対しており、鉄鋼労働組合や議会でも反対の声が高まっている。そんな中、バイデン大統領が両社間の買収合併(M&A)計画を阻止するものと見られる。
関係者によると、バイデン大統領は国家安全保障を理由に、USスチールの売却を不可とする予定である。
ハリス副大統領が、来る11月5日に行われる大統領選の勝敗を握る接戦州の一つである、ペンシルベニア州のブルーカラー有権者の支持を得るために努力している中、バイデン大統領が数日内にUSスチールの売却不可の方針を発表する可能性が高い。
さらに外資企業による米企業買収承認の権限を持つ、財務省主導の政府機関、対米外国投資委員会(CFUS)は、既に日本製鉄に買収不可の方針を通知したとされている。
2名の関係者によると、CFUSは両社の合併が米国の国家安全保障に及ぼすリスクを克服できないと通知した。
売却不成立がほぼ確実になってくると、USスチールの株価は暴落した。
USスチールは取引終了1時間前の時点で前日比7.75ドル(約1114円、22%)暴落し、27.85ドル(約4002円)にまで落ち込んだ。
「日本製鉄に売れなければ工場を閉鎖することになる」
一方、USスチール最高経営責任者(CEO)であるデビッド・ブリット氏は同日WSJとのインタビューで、政界が何の代替案もなく売却に反対していると公言した。
ブリットCEOは、日本製鉄が30億ドル(約4310億円)規模の投資を約束したとし、この資金はピッツバーグの老朽化した製鉄所が競争力を維持し、従業員の雇用も守るために必要不可欠であると述べた。
彼は「もし(M&A)交渉が破綻すれば、そのようにはできない」とし、「私はお金がない」と明言した。
しかし、ハリス・トランプ両大統領候補、一部の下院議員、そして米鉄鋼労働組合連盟であるユナイテッド・スチールワーカーズは、日本製鉄が141億ドル(約2兆261億円)でUSスチールを買収することに反対している。
競争力低下
USスチールは老朽化した設備と技術力により競争力を失っている。
2010年代を通して赤字に苦しんでいた。
ブリットCEOは、日本製鉄からの投資と新技術がなければインディアナ州ゲーリー、ピッツバーグ近郊のモンバリー・ワークスの老朽化した製鉄所は稼働中止となる可能性があると警告した。
ハリス副大統領が望んでいるブルーカラーの支持を得られない可能性があるとの警告であった。
生産基準で世界4位の鉄鋼メーカーである日本製鉄は、先週USスチールへの投資約束を倍増させた。今後数年にわたり老朽化したUSスチール製鉄所に27億ドル(約3879億円)を投資することを約束し、2026年までには臨時職労働者の削減も控えると明らかにした。
USスチールは1901年からピッツバーグに拠点を置き、ペンシルベニア州の主要な製造業者である。
同社によれば、ペンシルベニア州で直接的および間接的に1万1417の雇用を創出し、年間1億3820万ドル(約198億円)の州・地方政府税を納めている。
一方、USスチールの株主は昨年4月、日本製鉄への売却を既に承認している。