インドの夫婦が、亡くなった息子の冷凍精子を取り戻すため、4年間にわたる法的闘争を繰り広げ、勝訴した。
先日10日、英国メディア「BBC」などの報道によると、デリー高等裁判所は、病院が保管している30代男性の冷凍精子を、両親に返還するよう命じる判決を下した。
報道によると、未婚のフリート・インデル・シンは血液がんを患い、闘病の末に2020年9月、30歳で亡くなった。彼は、生殖能力の低下に備えて、化学療法を開始する3ヶ月前に病院の勧めで精子凍結していた。
彼が亡くなると、両親は彼の冷凍された精子を使用し、孫を持つことを望んだ。しかし、病院側は「精子は法的配偶者にのみ返還できる」としてこれを拒否した。理由としては、生命倫理の問題や新しい命を無責任に誕生させることへの懸念が挙げられた。
これに対し、両親は訴訟を起こし、法的な争いに発展した。夫婦は法廷で「自分たちが生まれた子供を直接育てる」と主張し、さらに自分たちが亡くなった後には娘が子供の養育を引き継ぐことを明記した同意書を裁判所に提出した。
また、夫婦の法律代理人は「インドの代理母に関する法律は、代理母の商業的利用を防ぐためのものであり、悲しみに暮れる両親の個人の自由を制限するものではない」と主張した。
裁判所は、「インド法において、精子所有者の同意がある場合、死後の受精を禁止することはできない」と述べ、「亡くなった者に配偶者や子供がいない場合、両親が法定相続人として精子サンプルを受け取る資格がある」との判決を下した。現在、夫婦の親戚の一人が代理母となることに同意している。
BBCは、これに関連して、日本、アメリカやイギリスなど一部の国では、書面による同意があれば死後受精が認められているものの、インドを含む多くの国では依然として禁止されていると報じた。
しかし、最近のイスラエル・パレスチナ戦争やロシア・ウクライナ戦争といった紛争により、死後受精を求める声が増加している傾向があるとも指摘している。特にウクライナでは、軍人の精子を無料で冷凍保存する取り組みが行われていることが知られている。
亡くなった者の精子を利用した死後受精の前例は、初めてではない。2018年には、インドで48歳の女性が、27歳で脳腫瘍で亡くなった息子の精子を使用し、代理母を通じて孫が誕生した事例がある。また、2019年には、ニューヨーク州最高裁判所が、事故で亡くなった陸軍生徒の両親に対し、冷凍した息子の精子を使用する許可を与えた例もある。