ドイツのクリスティアン・リントナー財務相は25日（現地時間）、アメリカがEUとの貿易戦争を開始すればEUも報復措置を取ると警告した。これは、翌月の米大統領選を控え、共和党候補ドナルド・トランプ前大統領が再選に向け優勢を保つ中での発言である。
トランプ氏は再選後、すべての輸入品に10～20％の関税を課すと公約しており、「タリフマン（関税マン）」と自称している。
ワシントンで開かれたIMF年次総会に参加中のリントナー氏は、CNBCのインタビューで、アメリカがEU製品に大規模な関税を課す場合、EUも米製品に対し報復関税を検討せざるを得ないと警告した。彼は「貿易摩擦に勝者は存在せず、失うのはすべての国だ」と述べた。
トランプ氏の通商政策に関して、リントナー氏は「どの政権であれ、EUとの貿易摩擦は最善策ではないとアメリカ側に理解してもらいたい」としつつも、関税引き上げに対しては報復措置を辞さない姿勢を示した。
また、リントナー氏は「アメリカの通商政策は主に中国を対象とするものであり、EUは米中対立の巻き添えを受けるべきではない」と述べ、貿易摩擦の影響からEUを守る姿勢を強調した。
現在、トランプ氏はアメリカ製品にかけられる関税を10～20％に引き上げ、中国製品には60％の関税を課す方針を掲げている。アメリカが関税を引き上げれば、各国の輸出やGDP成長率に深刻な影響が及ぶと予想される。
スイスのUBS銀行は、米国が中国製品に60％、その他の輸入品に10％の関税を課した場合、2026年の世界経済成長率は現行の関税率と比べて1ポイント低下すると見込んでいる。これは、3％と予測される成長率が3分の1減少することを意味する。
オランダのABNアムロ銀行も、アメリカが10％の関税を導入すれば、ユーロ圏経済は2022年のロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機に匹敵する打撃を受けると警告している。
さらにIMFは、アメリカが関税を引き上げて貿易障壁を高め、各国が報復措置を取る場合、長期的に世界のGDPが7％減少し、これはドイツと日本のGDPが消えるほどの損失に相当すると指摘している。