肥満治療薬「ウゴービ」(成分名:セマグルチド)の用量を増やした後、急性膵炎で死亡する事件が米国で発生した。SCI級国際学術誌「Cureus」によると、70代男性がセマグルチドの用量を増量した後、急性膵炎で入院し死亡したという。膵炎はセマグルチドの副作用の一つとされている。
米コネチカット大学ファーミントンキャンパスの研究チームによると、2型糖尿病や心房細動を患っていた74歳の肥満患者A氏が、強い上腹部痛で集中治療室に搬送された。検査の結果、中性脂肪やカルシウムは正常で、腹部超音波にも異常はなかったが、入院中に敗血性ショックや腎不全、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、心停止を引き起こし死亡に至った。
A氏は20年前に糖尿病と診断され、4年前からセマグルチドを週0.25mgで服用し、その後0.5mgに増量していた。研究チームによれば、0.5mgに増量後に吐き気や便秘など副作用が現れ、再び0.25mgに減量したものの、耐えきれず急性膵炎を発症したと推測される。また、「新たな薬剤やサプリメントを使用していなかったため、セマグルチドが膵炎の原因である可能性が高い」と指摘した。
さらに、セマグルチド使用直後の急性膵炎発症は以前から報告されていたが、用量増加後に発症した事例は初の報告で、遅発性膵炎の可能性について追加研究が必要だと述べた。
研究チームは、セマグルチドを服用した他の患者の急性膵炎発症事例も報告している。61歳の糖尿病患者が2か月間服用後に急性膵炎と診断された事例や、肥満治療を始めて12週目の51歳女性が急性壊死性膵炎と診断されたケースがある。
ウゴービはGLP-1ホルモンと似た作用で食欲を抑える効果があり、BMIが30以上の高度肥満患者に限り処方されるが、美容目的の乱用も報告されている。
最近、イギリス政府もセマグルチド使用基準を満たさない美容目的の使用で膵炎を発症した事例を公表し、深刻な副作用リスクに対し責任ある使用が必要だと警告している。