アメリカのドナルド・トランプ次期大統領のホワイトハウス奪還により、グローバル外交安全保障の最重要課題であるウクライナ戦争とガザ戦争という「二つの戦争」が新たな局面を迎える可能性が高まった。
トランプ次期大統領は大統領選挙期間中、これらの戦争の長期化に関してバイデン政権を批判し、「大統領就任後に戦争を終結させる」と公言していたため、新たな解決策を提示すると見られる。
トランプ次期大統領の勝利により、戦場で最も緊張が高まっているのはウクライナだ。開戦から1000日を迎えようとするウクライナ戦争に関して、トランプ次期大統領は「北大西洋条約機構(NATO)がウクライナに現在のように資金と武器を支援する方式では戦争を終結できず、米国の国益にも損害を与える」と繰り返し強調してきた。
以前、「就任後24時間以内に戦争を終結させる」と発言していたトランプ次期大統領がウクライナへの支援を中止する可能性が高いとの見方が強まっている。
特にトランプ次期大統領がプーチン大統領との親交を強調していることから、ウクライナにロシアが占領した領土の放棄を求め、終戦を導くという観測も出ている。
先に副大統領候補のJ・D・ヴァンス氏はウクライナ戦争の終結計画に関して今年9月、「トランプ次期大統領当選時にクレムリン、ウクライナ、欧州の関係者と交渉を開始する」と述べ、「おそらくロシアとウクライナの『現在の境界線』になるだろう」と言及していた。
ロシアがウクライナ領土の約20%を占領して対峙している現在の前線が非武装地帯になる可能性への懸念が高まっている。
戦争拡大リスクが依然として残る中東地域では、イスラエルに対する米国の支援がさらに強化されると予想されている。ガザ地区に関する具体的な計画は示されていないものの、「イスラエルの自衛権を支持する」と親イスラエル姿勢を示してきたトランプ次期大統領が、今後イスラエルへの安全保障支援を強化し、イランの脅威に積極的に対応する可能性が高いとの見方が強まっている。
イスラエルのネタニヤフ首相も、トランプ次期大統領の勝利演説直後の通話で、イランの脅威への対応を含む協力策を協議したと報じられた。
これまでバイデン政権はイスラエルに対し、ガザ地区への人道支援を許可するよう圧力をかけ、これに反対する場合は、武器の支援を制限する方針を示していた。しかし、支援制限の開始時期を大統領選後に設定したため、この方針の効果は限定的となった。
英ガーディアン紙は「トランプ次期大統領の勝利が中東に及ぼす最も即時的で影響力のある波紋は、イスラエルの極右派『併合派』に力を与えたことだ」と分析している。