ドナルド・トランプ次期アメリカ大統領が新政権のエネルギー長官にシェールエネルギー開発企業のCEOを指名した。また、財務長官には億万長者のファンドマネージャーであるスコット・ベセントに代わり、投資銀行キャンター・フィッツジェラルドのCEOであるハワード・ラトニックが浮上している。テスラCEOのイーロン・マスクが彼を公式に支持したためだ。
AP通信とCNBCなどアメリカメディアによると16日、トランプ次期大統領はコロラド州に本社を置く、リバティエネルギーの創業者兼CEOクリス・ライト氏をエネルギー長官に指名し、「彼はアメリカのエネルギー独立を実現し、世界のエネルギー市場と地政学に変革をもたらした、シェール革命の立役者」と称賛した。
さらに、新設される国家エネルギー委員会とともに、アメリカのエネルギー独占を推進し、物価を引き下げる一方、中国などとAI兵器開発競争で勝利することで、アメリカの外交力を世界に広めることが期待されると述べた。トランプ次期大統領は、4月にフロリダ州マー・ア・ラゴの自宅で石油企業の幹部やロビイストたちを招いた夕食会を開き、自身が当選すればジョー・バイデン大統領の環境規制を撤廃することを約束し、彼らに総額10億ドル(約1,544億円)の寄付を求めた。
ライト氏もトランプ陣営の選挙運動中に政治献金を行い、気候変動に否定的な見解を示してきた。彼は、環境活動家たちの気候変動に関する主張が、自らの重みで崩れ始めていると発言したこともある。さらに、トランプ次期大統領が世界市場でのエネルギー独占のために強調してきた水圧破砕法(フラッキング)の支持者であり、2019年にはフラッキングによって生成された原油の安全性を証明するために直接飲んだこともある。
彼はアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)で学士号を取得し、その後MITとカリフォルニア大学バークレー校の大学院で電気工学を学んだ。1992年にはピナクル・テクノロジーズを創業してフラッキングの道を開き、2010年にリバティエネルギーを設立した。現在、小型原子炉スタートアップ企業オクロの取締役も務めている。
政治経験のないライト氏のエネルギー長官指名に対して、反応は分かれている。アメリカエネルギー業界では彼の指名を歓迎している。
アメリカ石油協会のピーター・ソマーズ会長も、ライト氏がアメリカと自由貿易協定(FTA)を結んでいない国にも天然ガスを輸出するというバイデン政権の方針を変更することを期待している。
アメリカ上院エネルギー・天然資源委員会所属のジョン・バラッソ議員は「ライト氏はエネルギー革新者としてフラッキングブームの基礎を築いた」と述べた。一方、天然資源防衛協議会のジャッキー・ウォン副会長は、ライト氏を「汚れた化石燃料のチャンピオン」と呼び、「エネルギー長官への指名は致命的な過ち」だと指摘した。
トランプ次期大統領は先週、ホワイトハウス首席補佐官や国務長官、国防長官、国連大使、中央情報局(CIA)長官、国家情報長官(DNI)、司法長官、国土安全保障長官、国境管理責任者、政府効率化責任者を指名した。
まだ指名されていない財務長官のポストは、ヘッジファンドマネージャーのスコット・ベセントと投資銀行キャンター・フィッツジェラルドCEOのハワード・ラトニックの二択に絞られている。
財務長官指名に対しては、トランプ次期大統領の当選に貢献したテスラCEOのイーロン・マスクの影響力が強まっている。マスクはSNSのX(旧Twitter)で、自身のウォール街の同僚投資家であるベセントよりもラトニックが財務長官を務めるべきだと主張した。マスクは「ベセントは単なる常識の選択だが、ハワード・ラトニックは実際に変革をもたらすだろう」と語り、ラトニックが財務長官に就けば大規模な革新が起こるだろうとし、「我々は何らかの形で変化が必要だ」と述べた。