米AI企業「OpenAI」の共同創業者イーロン・マスクが、同社の営利法人化を阻止するため米国裁判所に仮処分を申請した。OpenAIを相手取ったマスクの法的争いは今年に入って4件目となる。
経済メディアCNBCの11月30日(現地時間)の報道によると、AIスタートアップ「xAI」創業者で、テスラとスペースXのCEOを務めるマスクは、前日米連邦裁判所に仮処分申請書を提出。この申請には、マスクの弁護士団に加え、xAIの弁護士、OpenAIの元役員シボン・ジリスの弁護士も名を連ねた。
申請書では、OpenAIの営利法人化の停止とともに、同社が投資家にxAIを含む競合AI企業への投資を控えるよう促している行為の差し止めを求めた。
また、マスク側は「OpenAIが不正に取得した競争上の機密情報や、マイクロソフト(MS)とOpenAIの取締役会の協力を通じて得る利益を禁止すべきだ」と訴えている。従来からマスクは、OpenAIの筆頭投資家であるMSとOpenAIが事実上の合併を進め、AI市場での競争相手を排除しようとしていると主張してきた。
これに対しOpenAIの広報担当者は「同じ根拠のない不満を蒸し返したマスクの4度目の試みに過ぎず、まったく意味をなさない」とコメントした。
OpenAIは2015年、マスク、サム・アルトマン(現CEO)、グレッグ・ブロックマン、イリヤ・スツケバー、ミラ・ムラティの5名により非営利法人として設立。設立時の目的は「人類のための安全な汎用AI(AGI)の開発」と定められていた。
その後、マスクは2018年に株式を売却してOpenAIを去り、アルトマンは翌年MSからの投資を受け入れ、法人を営利化へと転換した。2022年、OpenAIはAIチャットボット「ChatGPT」で世界的な注目を集めた。一方のマスクは営利重視のAI企業に対抗するため、昨年7月にAIスタートアップ「xAI」を立ち上げ、同年12月に初のAIチャットボット「Groq」を公開した。
マスクは今年3月にも、アルトマンとOpenAIを相手取り、営利追求の停止とAI技術の公開を求める訴訟を起こしている。この際マスクは、「OpenAIは公式サイトで『AGIが人類全体に利益をもたらすようにすること』を使命として掲げているが、実質的には世界最大の技術企業MSの子会社となっている」と指摘。アルトマンが非営利組織としての運営を約束しながら、営利化に転じたことは投資家らとの契約違反だと訴えた。
マスクはこの訴訟を6月の裁判開始前に突如取り下げたものの、8月に再び提訴し、OpenAIの営利活動を問題視して損害賠償を請求。11月中旬には訴訟対象にMSを加え、新たな訴状を提出した。
一方、英フィナンシャル・タイムズ(FT)は10月2日付の報道で、OpenAIが66億ドル(約9,217億円)の新規資金を調達する際、投資家に競合企業への資金提供や協力を禁じる条件を付していたと報じている。