韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が3日夜、ソウル・龍山の大統領室ブリーフィングルームで戒厳令を宣布した。
ユン大統領は予告なしに行われた緊急談話で「国会が犯罪者集団の巣窟と化し、立法独裁によって国家の司法・行政システムが麻痺している」と述べ、「自由民主主義体制を転覆させようとする反国家勢力を排除するため、緊急戒厳令を宣布する」と発表した。
またユン大統領は、「第22代国会発足以降、10人目の弾劾を推進されるなど、世界でも類を見ない状況だ」とし、「裁判官を脅迫し、多数の検察官を弾劾することで司法業務を麻痺させ、行政安全部長官、放送通信委員長、監査委員長、国防長官の弾劾を試みるなど、行政府全体までも機能不全に陥れている」と弾劾推進の動きを強く批判した。
特にユン大統領は野党の予算審議過程を厳しく非難し、「麻薬犯罪の取り締まりや治安維持に必要な主要予算を全額削減し、国家の根幹を揺るがし、韓国を麻薬天国や治安崩壊の状態に追い込んだ」と指摘した。
さらに「これは自由な韓国の憲政秩序を踏みにじり、憲法と法律に基づいて設立された正当な国家機関を混乱に陥れる行為であり、内乱を企てる明白な反国家行為だ」と強調した。また、戒厳令宣布に関してユン大統領は「可能な限り速やかに反国家勢力を一掃し、国家を正常化する」と述べ、「善良な国民には若干の不便が生じる可能性があるが、それを最小限に抑えるよう全力を尽くす」と約束した。
戒厳令の宣布は大統領に与えられた権限だが、国会にはこれを解除する権限がある。韓国憲法第77条では、戦時や事変、またはこれに準ずる国家非常事態において、公共の秩序維持のために必要な場合、大統領が戒厳を宣布できると規定されている。戒厳令が発動されると、令状制度や言論・出版・集会・結社の自由が制限される可能性があり、政府や裁判所の権限についても特別措置が取られる場合がある。
憲法第77条では、大統領が戒厳を宣布した場合、直ちに国会に通告する義務があると定めている。そして国会は在籍議員の過半数の賛成で戒厳の解除を要求できると規定しており、この場合、大統領は宣布した戒厳を解除しなければならない。