北朝鮮メディアは、韓国での非常戒厳令宣言および弾劾推進の動きについて、沈黙を続けている。
韓国に対して連日厳しい非難を続けてきた北朝鮮だが、3日の非常戒厳令宣言以降、この問題に関する報道を控えている。労働新聞や朝鮮中央テレビ、朝鮮中央通信など北朝鮮の主要メディアも、8日午前時点で関連する報道や韓国情勢に関する言及は確認されていない。
労働新聞は4日、「韓国の市民団体がユン・ソンニョル大統領の退陣と権威主義的な法案の撤回を要求」という記事を掲載した。この内容は、2日に大学生進歩連合などの団体が発表した声明を取り上げたものであり、非常戒厳令とは直接の関係性は見られない。また、7日に行われたユン大統領の弾劾訴追案の採決が失敗に終わった後も、北朝鮮メディアは沈黙を続けている。
この北朝鮮の動きに関しては、複数の視点が提示されている。一部の分析では、韓国内の対立が激化する中で、北朝鮮が軽率に対南批判を展開することを避け、情勢の推移を注視しているとの見方がある。また、北朝鮮とロシアの軍事協力に国際的な関心が集まる状況や、米国でトランプ政権復帰の可能性が取り沙汰される中で、北朝鮮が慎重な姿勢を維持しているとの指摘もある。
さらに、非常戒厳令が法的手続きに基づいて解除され、その過程で市民の力が大きく作用したことから、韓国情勢に対する北朝鮮の思惑が複雑化しているとの解釈がある。弾劾訴追案の審議過程で数万人の市民が国会前に集結し、弾劾失敗後の市民の怒りの高まりが、北朝鮮の人民を刺激する可能性が指摘されている。
統一部当局者は、韓国メディアを通じて「北朝鮮もこれまで韓国における活発な民主主義の展開を何度も見てきたため、韓国への介入は現実的に難しいと認識している」と述べた。