米国防総省は、ロシアに派遣された北朝鮮軍がクルスク州に駐留しているものの、現時点で戦闘には投入されていないとの見方を示した。現地メディアによると、北朝鮮軍は主に後方での警戒任務に従事しており、これによりロシア軍が前線により多くの兵力を投入できる態勢を整えているという。
9日(現地時間)、米国防総省の速記録によると、サブリナ・シン国防副報道官は記者会見で北朝鮮軍の最前線投入に関する質問に対し、「北朝鮮軍は依然としてロシアのクルスク州に留まっている。戦闘に参加した形跡はないが、彼らの存在は確認している。我々は北朝鮮軍が戦闘に備えている状況を認識しており、引き続き注視している」と述べた。
北朝鮮は昨年10月以降、ウクライナに侵攻したロシアを支援するため、本格的な部隊派遣を行っている。ウクライナ軍は先月、北朝鮮軍との交戦があったと主張。ウクライナ軍参謀総長のアナトリー・バリレビッチ氏は先月24日、「1万1,000人以上の北朝鮮軍がクルスクに配置され、その一部がウクライナ軍と交戦している」と明らかにした。また、ウクライナのゼレンスキー大統領は1日、共同通信のインタビューで「ロシアが北朝鮮軍を『弾よけ』として使用している実態は明らかだ」と指摘する一方、正確な犠牲者数については「証拠が必要」との認識を示した。
米国は北朝鮮軍の派遣事実を確認しているものの、交戦に関してはコメントを控えている。ウクライナのメディア・キーウ・インディペンデントは5日、ウクライナ特殊作戦部隊が運営する国家抵抗センター(NRC)の報告を引用し、ロシアはクルスク州で北朝鮮軍を戦闘作戦に投入していないと報じた。同報道によると、北朝鮮軍はロシア第11空挺旅団に配属され、駐屯地の警戒任務を担当。NRCは、北朝鮮軍の警戒勤務により、ロシア軍がより多くの兵力を前線に配置できる態勢が整ったと分析している。
一方、米インド太平洋司令部のサミュエル・パパロ司令官は7日、米カリフォルニア州のロナルド・レーガン記念図書館で開かれた安全保障関連会議で、北朝鮮側から派兵の提案があったと指摘。パパロ司令官によると、北朝鮮は派兵の見返りとしてロシアの弾道ミサイル大気圏再突入技術や潜水艦関連技術の提供を求めているという。また、北朝鮮がロシアからMiG-29およびSu-27戦闘機の支援を受けるための交渉を行い、一部合意に達したことも明らかにした。
米国防総省のシン副報道官は、ロシアが提供を約束した具体的な内容に関する追加情報の有無を問われ、「ない」と回答。「我々はロシアと北朝鮮の関係強化を注視しており、情報や北朝鮮軍派兵のような能力交換が行われていることを確認している」と説明したうえで、「これ以上の詳細についてはコメントを控える」との立場を示した。