北朝鮮メディアは11日、ユン・ソンニョル政権の非常戒厳宣言の発令・解除と、それに伴う韓国の弾劾政局を初めて報じ、7日ぶりの対南非難を再開した。
北朝鮮は11月中旬から12月4日まで尹大統領批判集会のニュースなどを連日報じていたが、5日以降は尹大統領の非常戒厳令宣言や韓国内の動向、反政府デモに関する報道を一切控えていた。
朝鮮中央通信は「深刻な統治危機、弾劾危機に直面したユン・ソンニョルが突如非常戒厳令宣言を発令し、独裁の銃剣を国民に向ける衝撃的な事件が発生し、韓国全土が阿鼻叫喚の状態に陥った」と報じた。北朝鮮住民が目にする労働新聞にも同様の記事が掲載された。新聞は記事とともに韓国国会議事堂前でのろうそく集会の写真も掲載した。
続けて、3日夜のユン大統領による非戒厳令宣言発令とその6時間後の解除、7日の国会本会議でのユン大統領弾劾訴追案提出と与党議員の集団退場による弾劾案無効化に関するニュースも詳しく伝えた。さらに、「複数のヘリコプターと陸軍特殊戦司令部の人員を含む完全武装の戒厳軍が国会を封鎖した」と伝え、戒厳令下で軍が動員された事実も報じた。
また、7日にユン大統領の弾劾案が廃案となった後、ソウルで広範囲にわたってろうそく集会とデモが展開されたとし、「集会で発言した者たちは、ユン・ソンニョルの存在自体が戦争であり災いだ、ユン・ソンニョルは即刻弾劾されるべきだ、応分の責任と罪を問い、必ず処罰すべきだと主張した」と紹介した。
北朝鮮当局がこれまで沈黙を保っていたのは、今回の事態に敢えて関与する必要性を感じておらず、軽率な挑発がもたらす逆効果を懸念していたためだとの分析も出ている。
米国の民間団体「コリア・ソサエティ」の政策局長は「北朝鮮は自らが前面に出て宣伝しなくてもユン大統領が弾劾されると見ており、むしろ介入すればユン大統領や保守勢力に(弾劾反対の)口実を与えかねないと考え、沈黙している」と分析した。また、北朝鮮の軽率な挑発は来月発足するトランプ政権との関係改善の可能性を初期段階で台無しにしかねないとの懸念もあると説明した。
北朝鮮が対南非難報道を再開したことから、非常戒厳令宣言をめぐる事態を積極的に取り上げ、宣伝材料として活用する可能性が高いとみられている。