ドナルド・トランプ次期米大統領は、出生市民権制度の廃止を推進し、いわゆる「出産旅行」を阻止するため、ビザ発給要件などの強化を検討していると、「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」が9日(現地時間)に報じた。
WSJによると、トランプ陣営の政権移行チームは、両親の法的滞在資格に関係なく米国で生まれた者に自動的に市民権が付与される「出生市民権制度(birthright citizenship)」を制限するため、複数の行政命令案を作成しているという。
この行政命令は、市民権を証明するための連邦機関での書類発行要件を変更する形で、出生市民権制度に関連する内容になる見込みだ。
トランプ陣営は、行政命令の施行直後に訴訟が提起される可能性を考慮し、制限の範囲をどこまでにするかについて検討を重ねている。また、移行チームは「出産旅行」に関して、行政命令や規則制定を通じて、子どもの米国市民権取得を目的とした妊婦の渡米を抑制する措置を講じる見通しだ。観光ビザの資格基準強化などが選択肢として挙がっており、観光ビザは通常10年間有効で、一度の入国で約6カ月の滞在が可能であるが、今回の措置ではその資格基準の強化が検討されている。
先日、トランプ次期大統領はNBC放送のインタビューで、出生市民権制度の廃止計画について問われ、「検討中だ」と明言した。
彼は昨年の大統領選で、大統領に当選した場合に行政命令により出生市民権制度を廃止し、米国市民権取得を目的とした「出産旅行」を禁止することを公約していた。
しかし、米国憲法修正第14条は、米国で出生または帰化した者、および米国の管轄下にあるすべての者を米国市民と見なすと定めている。
連邦最高裁は1898年、中国系アメリカ人が起こした訴訟で、この憲法解釈を判決で確定させた。このため、大統領の権限である行政命令のみでは出生市民権制度の変更は困難であるとの見方が多い。
トランプ次期大統領は前日のインタビューで、行政命令が憲法に優先できるかとの質問に対し、「私たちはそれを変える必要がある」と述べた。