韓国のユン・ソンニョル大統領が自ら辞任する意思がないことを公式に表明し、政局が弾劾局面へと変化している。
ユン大統領は12日、龍山大統領室で行われた国民向け談話で「弾劾であれ、捜査であれ堂々と立ち向かう」と述べ、退陣の要求を拒否した。これは国民の力のハン・ドンフン代表が提案した「秩序ある辞任」案を公然と拒否したことになる。
国民の力は非常戒厳令で引き起こされた混乱を収拾するため、政局安定化タスクフォース(TF)を設置し、「2・3月退陣、4・5月大統領選」のロードマップを大統領室に提示した。しかし、ユン大統領は退陣の意思がないことを強調し、憲法裁判所の弾劾審判を通じて正当性を争う姿勢を示した。これにより与党内部で弾劾賛成の動きが本格化している。
ハン代表はこの日、国会で記者会見を開き「現時点では弾劾を通じて大統領の職務を停止させることが唯一の解決策だ」と述べ、党の方針として弾劾賛成を決定すべきだと主張した。当初、非常戒厳令の初期段階では弾劾反対の立場を取っていたが、方針を転換したことになる。
国民の力内部では、ハン・ドンフン派と中立派の議員たちが相次いで弾劾賛成の立場を表明している。チン・ジョンオ議員は「国民に反する道を選ぶことはない」と述べ、事実上弾劾賛成を宣言した。チョ・ギョンテ、アン・チョルス、キム・イェジ、キム・サンウク、キム・ジェソプ議員など既存の賛成議員に加え、与党内で賛成票が徐々に増加している。
弾劾案可決には国会在籍議員の3分の2以上の賛成が必要だ。野党勢力が192議席を確保している中、国民の力から8名の賛成票が加われば弾劾案は国会を通過できる。国民の力内で賛成の意思を明確にした議員は7名だが、さらなる離反票が出る可能性が高い。
ユン大統領は国民向け談話で12月3日の非常戒厳令を正当化し、「大統領としての法的権限と高度な政治的判断だった」と主張した。与党内ではユン大統領が憲法裁判所の審判で勝算があると判断し、強硬路線に転じたとの見方が出ている。
14日に国会で弾劾案が可決されれば、憲法裁判所は180日以内に弾劾の可否を判断しなければならない。その後、大統領選挙まで最大で60日かかる。
ユン大統領が弾劾を選択した背景には、職務停止状態でも時間を稼ぎ、防御権を行使する戦略があるとみられる。現職のまま検察、警察、公職者捜査処による内乱容疑の捜査に対応することが、司法リスクを最小限に抑える方法だとの判断もあったと考えられる。
早期退陣すれば、公職選挙法違反で1審判決で執行猶予付き有罪判決を受けるなど複数の「司法リスク」を抱えるイ・ジェミョン民主党代表に政権を譲る可能性があるとの危機感もユン大統領にはあるとみられる。憲法裁で弾劾が認められ大統領職を離れることになっても、イ代表の裁判が終わるまで可能な限り時間を稼ごうという計算が談話に込められているとの見方も出ている。