アメリカのクレジットカード延滞が急増しており、高インフレに伴う低所得消費者の財政状態悪化が浮き彫りになっている。
29日(現地時間)フィナンシャル・タイムズ(FT)は、銀行評価企業バンクレッドデータの統計を引用し、今年1月から9月までのクレジットカード延滞が前年同期比で50%増加し、カード会社の貸倒処理額が460億ドル(約7兆2,178億円)に達したと報じた。
アメリカでクレジットカード貸出規模3位のキャピタルワンによれば、11月の貸倒処理率は前年の5.2%から6.1%に上昇したという。
さらに、カード会社が過去1年間で600億ドル(約9兆4,145億円)のクレジットカード債務を貸倒処理したにもかかわらず、1か月あたりの延滞額は約370億ドル(約5兆8,056億円)に上るとされている。
延滞率はコロナ禍以前の水準を上回っており、今後さらなる困難な状況が予想される。
延滞規模の増加は2010年以降最大であり、これはアメリカ消費者の購買力が低下していることを示すだけでなく、高インフレと連邦準備制度(FRB)の高金利政策が財政負担を増大させていることも明らかにしている。
2020年のコロナ禍で、連邦政府の景気刺激策として支給した現金がアメリカの消費を支えていた。
しかし、クレジットカード貸出業者が所得基準を満たさない消費者にもカードを発行してきた結果、2022年と2023年の2年間でクレジットカード債務は2,700億ドル増加し、昨年中頃に初めて1兆ドル(約156兆9,100億円)を突破した。
また、消費の増加はFRBによるさらなる金利引き上げを促す結果となった。この影響で、アメリカの消費者は今年1月から9月までの間に利息だけで1,700億ドル(約26兆6,746億円)を支払っており、特に低所得層はクレジットカード債務の返済に苦慮している状況である。
ムーディーズ・アナリティクスのエコノミストであるマーク・ザンディ氏は、高所得層には問題がない一方で、アメリカの所得下位3分の1にあたる層の貯蓄率が現在0%であると指摘している。また、FRBが新年に積極的な利下げを行うとの期待は、FRB当局者が示した0.5%ポイントの引き下げ予想発言により消滅したと述べている。
さらに、来年1月に発足するドナルド・トランプ次期政権が輸入品に大幅な関税を課す場合、インフレと金利がともに上昇し、2025年には消費者に二重の負担となる可能性があるとFTは伝えている。