ドイツの極右政党を支持するテスラのイーロン・マスクCEOと、ドイツの政治家たちの間で論争が激化している。
独紙ベルト(Welt)は、マスク氏は先月30日(現地時間)、自身のX(旧ツイッター)に「シュタインマイヤーは反民主的な暴君だ!恥を知れ」と投稿したと報じた。
ドイツのシュタインマイヤー大統領は27日、早期総選挙の発表時に「最近のルーマニア選挙のように密かであれ、最近Xで集中的に行われているように露骨であれ、外部からの影響は民主主義への脅威だ」と述べていた。ドイツの大統領は議会解散や閣僚任免などの権限を形式的に有するが、実権のない象徴的な国家元首である。
マスク氏は最近、独週刊誌ベルト・アム・ゾンタク(Welt am Sonntag)に極右傾向のドイツのための選択肢(AfD)支持を表明する寄稿を掲載した。マスク氏は「AfDは極右と描かれているが、既得権層から無視された多くのドイツ国民が共感できる政治的現実を扱う政党だ」とし、「極右政党と描くのは明らかな虚偽だ」と主張した。
AfDの欧州連合(EU)離脱や反移民政策なども支持した。AfDは2013年設立の新興政党だが、最近の世論調査で19%の支持率を獲得するなど躍進している。過去にナチス親衛隊を擁護する発言をし、欧州の極右政党連合「アイデンティティと民主主義(ID)」から除名された経緯がある。
ドイツ第一野党のドイツキリスト教民主同盟フリードリヒ・メルツ党首は先月29日、独紙プンケメディアグループ(Funke Mediengruppe)とのインタビューでマスク氏の寄稿を「越権行為だ」と批判した。「西側民主主義の歴史上、(マスク氏のように)同盟国の選挙運動に介入するような例は思い出せない」と非難した。
マスク氏は、テスラがドイツに電気自動車工場を持つため、ドイツの政治について公然と発言する権利があると主張している。これに対しドイツのオラフ・ショルツ首相は31日の年頭所感で「ドイツの進路を決めるのは国民だ。SNS所有者が決めることではない」とマスク氏を批判した。