中東で多くの同盟国を失ったイランは、過去より孤立し脆弱な状態でドナルド・トランプ米国次期大統領の再任期を迎えることになったとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が5日(現地時間)に分析した。
昨年、親イラン武装勢力であるパレスチナのハマスとレバノンのヒズボラの指導者がイスラエルに排除され、年末にはシリアのバッシャール・アサド政権までもが反政府勢力に追放されたことで、中東における「抵抗の軸」が大きく揺らいだ。
さらに、内部では深刻な経済危機も重なり、イラン政権は国民の支持まで失ったとWSJは指摘した。電力不足により政府機関や学校が閉鎖され、数十の製造工場が操業を停止した。
経済状況を示すバロメーターであるイランの通貨リアルの価値は、1ドルあたり82万1,500リアルまで下落した。これは昨年初めと比べて40%の減少を示す。
世界銀行によると、イランの1人当たり国内総生産(GDP)は、西側の経済制裁が本格化した2012年以降、約45%減少し4,465.60ドル(約70万4,201円)を記録した。経済問題が深刻化する中、反政府デモは市民社会から産業界へと拡大した。看護師や通信業界の従業員は、給与支払いの遅延に抗議し、退職教員も年金支給の遅れに怒りを表し、議会前でデモを行った。特にイラン最大の外貨収入源である原油分野でも不満が広がっている。大規模な生産施設の一つであるアバダン石油工場の労働者は、3ヶ月分の給与未払いに抗議した。
このような状況下で、イランはトランプ第2期政権との厳しい対決を強いられるとWSJは予測する。英シンクタンクである「英国王立国際問題研究所」(チャタムハウス)のサナム・バキル中東研究所長はWSJに対し、「おそらくイラン指導部は、数年ぶりに最も深刻な試練に直面しているだろう」と述べ「危機脱出の方法を模索する中で、イランが西側との妥協に踏み切る可能性もある」と語った。
穏健派とされるイランのマスウード・ペゼシュキヤーン大統領は昨年7月、社会改革や経済復興、西側との対話などを公約に掲げて当選したが、6ヶ月が経過した今、イラン国民の期待は裏切られたとWSJは評価する。国内外で相次ぐ挫折を経験したイランが、抑止力回復を名目に核開発プログラムを加速させる恐れも示されている。
ここ数ヶ月、イラン当局者らは核能力を強化するか、20年間は大量破壊兵器を製造しないというイランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイの公約を履行するかを巡って議論を重ねている。こうした中、トランプ政権の移行チームはイランの核兵器開発を阻止するため、空爆も視野に入れていると伝えられている。
イランは対話の意思を連日発信している。アッバース・アラーグチー外務次官は3日、中国中央テレビ(CCTV)とのインタビューで「西側諸国が新たな合意を引き出せるのであれば、我々は直ちに核プログラムに関する建設的な交渉を開始する用意がある」と述べた。さらに彼はトランプ第1期政権時、イランに課された制裁に言及し、「最大圧力政策1.0は最大の抵抗を引き起こし、米国にとって最大の敗北に終わった」と主張しつつ「証拠は米国の圧力以降、イランの核プログラムの進展レベルを見れば明らかだ」と語った。WSJは、双方が交渉に至るには、互いの悪い感情を払拭する必要があると指摘した。
トランプ陣営がイランに対して、より強硬な姿勢を取るようになったのは、昨年11月に米司法省がイラン工作員によるトランプ暗殺未遂の事実を公表したためと推測される。ハメネイは2020年、トランプ次期大統領が暗殺を命じたイランのガセム・ソレイマニ革命防衛隊の司令官について頻繁に言及している。
イランは13日、スイス・ジュネーブで英国、フランス、ドイツなど、欧州3カ国と核問題に関する会談を開く予定だ。バキルは「イラン政権が交渉に専念し、トランプ次期大統領の要求を受け入れる可能性はごくわずかにある」としながらも、「しかしトランプ陣営は、まだ妥協を受け入れる準備ができていないかもしれない。イランにはさらなる苦難が待ち受けているだろう」と予測した。