ドナルド・トランプ次期米大統領が、全ての国からの輸入品に関税を課す方針を維持する一方で、全輸入品ではなく特定の輸入品にのみ関税を課す案を検討していることが明らかになった。
ワシントン・ポスト紙は6日(現地時間)、3人の情報筋からの証言としてこの事実を伝えた。
この変更案は、大規模な一律関税によりアメリカとの貿易が急激に縮小し、アメリカ発のインフレによる世界経済へ悪影響を軽減する可能性があることを示唆している。
しかし、トランプ次期大統領は即座にこの報道を否定した。
一律関税から特定製品への関税へ
トランプ次期大統領は昨年11月5日の大統領選挙に向けて、全ての輸入品に関税を課す一律関税を主張し、当選後もこの方針を堅持してきた。
彼は、アメリカへのすべての輸入品に10~20%の関税を課すという立場を明確にしていた。
この方針に対し、多くのエコノミストや共和党議員たちからも懸念の声が上がっていたが、情報筋によると、就任2週間前を迎え、トランプ次期大統領の側近たちは依然として全ての国からの輸入品に関税を課す案を議論する一方で、対象項目を特定の製品に変更する方向で調整を進めていると語った。
国家安全保障や経済安全保障に不可欠な品目に対して関税を課す方針が検討されているという。
ただし、情報筋はこの方針はまだ議論段階であり、最終決定には至っていないと付け加えた。
方針転換の背景
トランプ次期大統領の一律関税からの撤退は、最近の下院議長再選時に見られた政治力学が大きく影響した可能性がある。
トランプ次期大統領は早い段階で共和党のマイク・ジョンソン下院議長の再選を支持したが、ジョンソン氏は第1回投票で必要な過半数に2票及ばず落選した。トランプ次期大統領が急遽議員たちに電話をかけた後、ようやく再選を果たした経緯がある。
共和党は下院で218対215という、民主党に対するわずか3議席のリードに過ぎない。
このような状況下で共和党の一部議員が懸念を示す一律関税を強行すれば、わずかな造反票でも政策が頓挫する可能性が高い。こうした事情がトランプ次期大統領の一律関税撤回の背景にあると分析されている。
一律関税、特にアメリカのスーパーマーケットの食料品棚を支えるメキシコ産農産物への関税は、食料品価格を大幅に引き上げる恐れがあり、政治的負担が大きい。
さらに、外国の部品や原材料に依存するアメリカ製造業にも多大な負担を与える。
このため、特定産業を対象に関税を課す方針への転換を検討しているとみられる。
鉄鋼、バッテリー、太陽光パネルが有力候補に
どの品目が関税の対象となるかは、まだ確定していないが、
情報筋によると、初期の議論では現在の防衛サプライチェーン、重要医療サプライチェーン、エネルギー製品などが関税対象として有力視されているという。
防衛サプライチェーンでは、鉄鋼やアルミニウム、銅などが関税対象となる見込みで、エネルギー製品ではバッテリーやレアアース、太陽光パネルなどが候補に挙がっている。また、重要医療サプライチェーンでは注射器、注射針、ガラス瓶、医薬品原料などに関税が課される見通しだ。
メキシコ・カナダ・中国
トランプ次期大統領は就任初日にメキシコとカナダからの輸入品に25%の関税を課し、中国製品の関税率もさらに10%引き上げると警告しているが、この脅しが実行されるかどうかは依然として不透明だ。
トランプ次期大統領はこの3か国がアメリカへの不法移民や麻薬の流入を積極的に阻止しない場合、報復措置を取ると明言した。
一方で、多くの財界人はこの措置が実行される可能性は低いとみているが、一部の情報筋は依然として有効な選択肢だと示唆している。
一律関税から特定品目への関税に方針転換しても、これら3か国に対する関税の脅しは依然として現実化する可能性がある。
トランプ次期大統領の反論
トランプ次期大統領はこれらの報道に対し即座に反論した。
彼は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、自身の関税政策は後退しないと断言した。「WPの記事に登場する匿名の情報筋は実際に存在しない」とし、「私の関税政策が撤回されるという不正確な内容が含まれている」と主張した。また、「これは間違いだ」と強調し、「WPも間違いだと知っている。これは単なるフェイクニュースだ」と非難した。