グリーンランドとパナマ運河を支配するために武力行使も辞さないとする米国のドナルド・トランプ次期大統領の発言が、中国に台湾侵攻の口実を与える可能性があるとの分析が出ている。
15日(現地時間)、 「ロイター通信」によると、中国の評論家らは、これまで米国が中国に対し台湾への軍事的脅威の中止を求めてきたが、トランプ氏の最近の言動により米国のメッセージが弱まったと見ている。
台湾を巡る軍事的対立の状況が短期的に変化する可能性は低いものの、一部ではトランプ氏が米国の外交規範を破れば、中国に機会が生まれる可能性があるとの見方も出ている。
ある中国の専門家は、トランプ氏が第1期政権でも外交を取引と見なしていたとし、第2期政権では台湾に関する交渉に応じる可能性もあると分析した。
復旦大学国際問題研究所の趙明昊教授は、グリーンランドやパナマ運河、さらにはカナダまで脅かすトランプ氏の言動を深刻に受け止めるべきだとし、「トランプ氏が真剣に考える取引主義を検討する必要がある」と提言した。
趙教授は、「台湾問題のような極めて難しい問題についても、中国の多くの人々はトランプ氏を交渉人として見ている」と述べた。
中国は台湾を自国領土の一部だと主張しており、台湾の統制のためには武力行使も辞さない立場を取っている。
しかし、中国と台湾の間で戦争が勃発した場合、米国が台湾を支援するかどうかは、いわゆる「戦略的曖昧性」政策により不明確だとロイターは指摘している。
トランプ氏は第1期政権時に台湾への武器売却を通常化するなど台湾を強力に支援した。しかし、昨年の大統領選挙キャンペーンでは、台湾が米国の保護を受けるためには対価を支払うべきだと発言した。
台湾問題はグリーンランドやパナマ運河関連の問題とは全く異なるが、特にグリーンランドに関するトランプ氏の発言は中国のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で大きな波紋を呼んだ。
香港城市大学法学部の王江雨教授は微博で「もしグリーンランドが米国に併合されるなら、中国は台湾を手に入れるべきだ」と主張した。
中国の検索エンジン「百度」が運営するあるブログの評論家は「トランプ氏がグリーンランドを侵攻するなら、中国は台湾を取り戻す機会をつかむべきだ」とし、「トランプ氏が本気のようなので、我々もこの件で何が得られるか検討すべきだ」と述べた。
中国の華中師範大学、政治国際学部の教授も中国のニュースポータル「網易」に「トランプ氏にとってグリーンランドがそうであるように、台湾も中国の核心的安全保障利益だ」としつつ、「トランプ氏は他国の主権を直接脅かすが、台湾は中国固有の領土であり、純粋に中国の内政問題で、他国の主権とは何の関係もない」との見解を示した。
しかし、これを口実に中国が台湾に武力行使をする場合、中国は莫大なコストを負担しなければならないとの評価もある。
ジャーマン・マーシャル基金のディレクターで台湾および中国問題の専門家であるボニー・S・グレイザー氏は「中国の軍事能力に対する習近平国家主席の評価など他の要因が作用する可能性がある」としながらも、「もし中国が(台湾への武力侵攻を)試みる場合、中国が負担するコストはより大きい」と分析した。
グレイザー氏は「中国がグリーンランドと台湾の間に類似点を見出せるかは疑わしい」とし、「中国はすでに台湾を自国の一部だと考えており、台湾に金を払うこともないし、台湾も買収に応じないだろう」と述べた。
むしろ国益保護のために武力行使を排除しないという発言が、中国の軍事行動を抑止する可能性があるとの見方も出ている。
シンガポールのラジャラトナム国際学大学院のドリュー・トンプソン上級研究員は「米国の利益を達成し保護するために軍事力の使用を排除しないという発言は、米国が台湾を守るために軍事行動を取らざるを得ない状況を抑止するのに役立つだろう」と主張した。