ドナルド・トランプ米大統領は、実業家のイーロン・マスク氏とラリー・エリソン氏が、中国のソーシャルメディア「TikTok」の買収を望んでいることを明らかにした。今後、米国が中国と関税戦争を行う際、TikTokが交渉カードとして利用される可能性も指摘されている。
21日(現地時間)、トランプ氏はワシントンのホワイトハウスで、5,000億ドル(約78兆646億円)の人工知能(AI)インフラ投資を発表する場で、テスラのマスク氏やオラクルのエリソン氏がTikTokの買収を希望していると述べた。また、米国側が株式の半分を保有することを条件に、TikTokの米国内での事業継続を許可する考えを示したとヤフーファイナンスが報じた。
トランプ氏は、自身に取引を行う権限があると主張し、この取引によりTikTokは「優れたパートナーシップを築くことになる」と述べた。
■ 米企業10~15社、TikTokの買収に関心
ヤフーファイナンスは、合弁事業方式での経営が法的には好ましくないものの、米企業にとっては財務的に魅力的な選択肢となる可能性があると分析している。
ウェドブッシュ証券のグローバルIT研究ディレクター、ダン・アイブス氏は、TikTokが今後の米中関税交渉において重要な交渉材料となるとの見解を示した。トランプ氏は、中国がTikTokの米国買収を承認しない場合、中国製品に対し関税を課す可能性があると述べ、さらに、バイトダンスが株式の半分を譲渡すれば、TikTokの米国内での事業継続を許可する考えを示した。
さらに、アイブス氏は、10社〜15社の米企業がTikTokの買収に関心を示しており、現時点でマスク氏が有利な立場にあると指摘。また、オラクルが積極的に買収に関与し、マスク氏にコンソーシアムを提供する可能性もあると予想している。
マスク氏は最近、ソーシャルメディア「X(旧ツイッター)」で、「表現の自由を制限する形でのTikTok禁止には以前から反対している」と投稿。一方、「TikTokが米国で使用される一方、中国では禁止されている現状は不公平であり、この不均衡は改善されるべきだ」と述べた。
■ 米国議会「TikTok関連の新法案を策定すべき」
ヤフーファイナンスは、合弁事業を通じて、TikTokが引き続き米国で使用されるかどうかが不透明であると報じている。米国の憲法専門家らは、株式を共同保有する形では、外国政府による影響を制限するための法案に基づき、TikTokの親会社である中国のバイトダンスが売却しない限り、法的には不十分だとの見解を示している。
公式な株式売却として認められるには、バイトダンスがTikTokの運営権を放棄し、株式が米国の敵対勢力の管理下に入らないことが求められる。ケース・ウェスタン・リザーブ大学の名誉法学教授ジョナサン・エンティン氏は、トランプ氏がこれらの要件を考慮しているかどうかについて疑問視しており、合弁事業ではその実現は不可能だと指摘している。ジョージア州立大学法学部のニコラス・クリル教授は、敵対国がTikTokの株式を20%以上保有したり、データやアルゴリズムにアクセスできる場合、アプリは禁止されるべきだと述べ、「米国議会の新法案だけが救済の道となる」と強調した。
他の法律専門家らは、米企業とTikTokの株式が50対50に分割される場合、今後大きな課題に直面するだろうとの見解を示している。トランプ氏は、TikTokの禁止を今後75日間延期し、買収者の出現を待つ構えだ。この件について、バーモント大学法学教授で米国憲法専門家のジャレッド・カーター氏は、75日以内に原告らが延期措置を問題視する可能性があると予測している。さらに、米国議会やTikTokの競合他社であるX、メタのインスタグラムが、この問題に関与する可能性も指摘されている。
第1期政権時代にTikTok禁止を検討していたトランプ氏は、昨年11月の大統領選で勝利した際、若者たちの支持を得たのはTikTokのおかげだとし、「だから私はTikTokが好きだ」と心境の変化を明かしていた。