ドナルド・トランプ大統領は就任初日からキム・ジョンウン北朝鮮国務委員長について言及し、「核保有国(nuclear power)」と呼び、注目を集めた。北朝鮮の核問題がロシアのウクライナ侵攻や中東問題に埋もれるとの可能性を覆し、就任早々、主要課題として浮上した。これは北朝鮮との核軍縮交渉への意欲を示す明確な証拠であり、議論の余地は少ない。実際、23日に行われた第2次トランプ政権初の米韓外相電話会談と日米豪印4カ国の戦略対話「Quad(クアッド)」外相会合では非核化については言及されなかった。
見解が分かれるのは、トランプ大統領の北朝鮮核交渉の狙いだ。ウクライナ戦争休戦のためにロシアに派兵された北朝鮮軍の撤退を促す意図だとの見方から、東アジアの核バランスを調整する目的だとの分析まで出ている。
■ 迅速な軍縮交渉の誘導
トランプ大統領が「nuclear power」という非公式用語で、北朝鮮を核保有国として認める余地を残す発言は、彼自身が直接発言する前から周囲の人物を通じて明らかにされてきた。ピート・ヘグセス国防長官候補が公聴会で「北朝鮮が核保有国の地位を持つ」と述べたのがその代表例だ。これは北朝鮮を早期に交渉の場に引き出すための誘導策であり、圧力だとの分析が出ている。北朝鮮が掲げる米朝対話の第一条件が核保有国の認定であること、過去の第1次トランプ政権で米朝対話開始前に強硬な対北圧力が行使されたことがその根拠だ。
統一研究院のホン・ミン首席研究員は本紙に「北朝鮮は政治的な核保有国認定と非核化議題の排除、対北制裁の解除を要求している。トランプ大統領の発言は北朝鮮の交渉受け入れ姿勢を高める狙いがある」とし、「トランプ大統領の任期4年内での非核化は不可能と見て、核軍備管理に焦点を当てたものだ」と分析した。梨花女子大学北朝鮮学科のパク・ウォンゴン教授は「キム委員長にとっては脅威となるメッセージだ」とし、「トランプ大統領の交渉提案に応じなければ、2017年当時のような最大限の圧力と制裁が加えられる可能性を懸念せざるを得ない」と指摘した。
■ 北朝鮮軍撤退・日韓核武装の誘導
トランプ大統領が北朝鮮核交渉を急いでいる背景には、いくつかの要因が考えられる。まず、ウクライナ戦争については、トランプ大統領が早期休戦を主要公約の一つに掲げている。これを実現するにはロシア・ウクライナとの交渉を急ぐ必要があるが、その障害となっているのが約1万人を派兵した北朝鮮だ。そのため、北朝鮮核交渉を通じてまず北朝鮮軍を撤退させ、その後ロシア・ウクライナとの本格的な休戦交渉に臨むという戦略だ。パク教授は「トランプ大統領の発言は北朝鮮核問題が優先順位というよりもウクライナ戦争に関連している」とし、「ウクライナ戦争と中東問題が整理されなければ米朝対話を本格化できないため、北朝鮮軍を一旦撤退させるよう促している可能性がある」と予測した。
また、北朝鮮核だけでなく東アジアの核バランスを考慮しているとの見方も出ている。米国が東アジアで対峙している北朝鮮、中国、ロシアがすべて核保有国である一方、同盟国の日本と韓国は核兵器を持たない状況を変えようとしているというものだ。つまり、米国が単独で核の傘として北朝鮮・中国・ロシアを抑止するのは困難であるため、北朝鮮核を無力化するか、日韓に負担を分散させる構想を持つ可能性があるということだ。公州大学国際学部のイム・ウンジョン教授は「トランプ大統領にとって、東アジアには北朝鮮・中国・ロシアの核武装国家が集中しているため、単独で対応することが難しいという認識が根底にある」とし、「北朝鮮核軍縮交渉の過程で北朝鮮を核保有国として認め、日韓の核武装を容認することで負担を分散させようとする可能性がある」と分析した。