
石破茂首相が与党自民党の衆院選で初当選した議員らに商品券を配布したことが明らかになり、政局が再び混迷を深めている。自民党は「裏金スキャンダル」で苦境に立たされ、昨年10月の衆院選で過半数割れとなった中、石破首相も退陣圧力に直面する可能性が高まっている。
14日の現地報道によると、石破首相の秘書は3日、首相との懇談会に先立ち、議員事務所を個別に訪問し、記念品として百貨店の袋に入れた10万円相当の商品券を手渡した。懇談会に参加した初当選の議員は15人程度とされる。
石破首相は前日夜、公邸で記者団と面会し、商品券配布の事実を認めたものの、辞任の可能性は否定した。首相は「法的には問題ない」とし、「家族への慰労などの観点から私費で用意した。多くの方々にご心配をおかけし、大変申し訳ない」と述べた。商品券を受け取った議員の大半は、石破首相事務所に返却したと伝えられている。
朝日新聞は「政治団体間の金銭授受は違法ではないが、個人が政治家に金銭等を寄付することは禁止されているため、政治資金規正法に抵触する可能性がある」と報じた。専門家らは、商品券の金額が通常の記念品の範囲を超えているとして、違法性を指摘している。
野党第1党の立憲民主党関係者は今回の件について「商品券を渡した首相側も、受け取った自民党議員側も言語道断だ」と批判した。自民党と政策ごとに協力関係にあった野党第3党の国民民主党の玉木雄一郎代表も「事実なら首相職にとどまることは困難だろう」と非難した。自民党のある幹部は「法律違反でなくてもタイミングが最悪だ」とし、「政治資金問題で騒がしい中、大きな打撃になるだろう」と語った。